佐野元春

『Someday』、『Visitors』、『Cafe Bohemia』と続いた特別盤シリーズに『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』が加わっている。

佐野元春の歌が好きになった頃には既に『Visitors』がリリースされていて、自分がリアルタイムで手に入れた初めてのアルバムは『Cafe Bohemia』だったのだけど、このアルバムの特別盤である『Essential Cafe Bohemia』がリリースされていた事は最近まで気付かず、手に入れられていない・・・。

『Cafe Bohemia』はそれ以前にリリースされていた5枚のシングルと、結果的にさらに2曲の12インチシングルがリリースされたほどの内容。それに続かざるを得なくなった『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』は、作る事にプレッシャーがあっただろうと想像。結果的には1枚のリード・シングル「約束の橋」と、アルバムリリース後に3枚のシングルが切られた。勝手な想像だけど、『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』はそれ以前のアルバムと違う視点を考えて作る事になった最初のアルバムだと思う。それは音のことだけではなくて、アルバムの構成をA面B面を意識したアナログの曲の並べ方を破棄して、最初から最後までを一気に聴かせるCDというメディアでリリースされる事を大きく意識したのではないかという事。『Cafe Bohemia』もCDでリリースされていたけれど、オレが手にしたのもそうであるように、まだアナログでリリースされる事がメインだった。その後リリースされたライブ・アルバムの『Heartland』ではCDをアナログのジャケットと同じ大きさの箱に入れるという試行錯誤をしていた。

ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』はA面B面は気にせずに曲が並べられたと思うけれど、アルバムの長さが46分程度と、アナログサイズを引きずっている。でも、今では80分近く音が詰め込まれたものも多々あるけれど、結局このぐらいの長さが聴きやすいとも思える。



ディティールの考察が続いても仕方が無い。

個人的に、『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』というアルバムは佐野のアルバムで最も好きなアルバム候補。これに並ぶのが『Cafe Bohemia』と『Time Out!』、そして最新作の『Coyote』。この中で最も軽快で楽曲のバリエーションが豊富なのが『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』だと思う。なのでアルバム本編は文句無し。購入の動機はレア・トラック集。ここにはアルバムのセッション時に録音されながらアルバムに収録されずにシングルのカップリングになった曲や、完全未発表なもの、そしてアルバム収録曲のデモ・テイクが入っていて、シングルのカップリング曲は元々持っていたものなので、デモ・テイクが一番興味深い。最終的にはほぼイギリスのミュージシャン達を従えて録音したものがアルバムには収録されているけれど、その前にバックバンドのThe Heartlandとの録音があった。アルバムに入った録音と比べてアレンジなどのツメの甘さはあっても、生々しさではこちらのほうに分があり、今回のリリースは良かったと思う。

一応DVDも見た。演奏内容に特に思うところは無いけど、『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』リリース後のライブであり、そのアルバムの付録なので『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』の楽曲を本編にして、それ以外の曲をボーナス扱いという構成がイマイチ。というか、DVDは無しでよかった。リリースしたいならDVD単独でもっと収録時間を増やしたものの方が良かったはず。









佐野元春ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 限定編集版』




『Essential Cafe Bohemia』欲しかったな(プレミア価格に手を出す気にはなれない)。そこに入っている佐野の変名ユニットのブルーベルズ名義の作品が久しぶりに聴きたかった。ブルーベルズは佐野がやっていたラジオ番組の企画で作ったものだったはずだけど、そのラジオではそれ以外にも佐野周辺のミュージシャンのユニットや、無名のアマチュアのミュージシャン等の録音もあって、それを集めて『mf Vol.1』というアルバムとしてリリースされた事がある(持っていたけど手放していた)。とか考えていたら、『mf Vol.1』の中古を探せばいいという事に気がついて、レコファンでは見つからなかったけれどamazonで手に入れ久々に耳にして、ブルーベルズはもちろん、イーストエンダースというバンドの「2セントのヴァージンドリーム」が好きだった事を思い出して、その曲も久々に聴けて懐かしい気分になった。「2セントのヴァージンドリーム」という曲、いい曲だと思うんだけどなあ。イーストエンダースとかヴォーカルの山岸理恵いう名前をネットで探してもこの曲以外に情報が見当たらない。