Brian Wilson

オレが洋楽を聴き出した頃、The Beach Boysは過去の人状態だった。だけど、当時大好きだったDavid Lee Roth(!!)の『Crazy from the Heat』に収録されたBB5の「California Girls」を聴いて、しかもその曲にCarl Wilsonがコーラスで参加していたりして、なんとなく名前を覚える。



そして『The Beach Boys ('85)』がリリースされ、シングルの「Getcha Back」が少しヒットして、それをMTVで見て、昔の偉い人として認識する事になった。

それから数年経って、まだまだラジオが重要なメディアの時代、たまたま聴いていた渋谷陽一の番組で、Brian Wilsonの「Melt Away」が流れる。その後、Brianの1stソロである『Brian Wison』がリリースされ、それを手にした。



それまで興味の対象に無かったのに「Melt Away」を1度聴いただけでアルバムを買う事を決めたのだから、あの頃のオレは「Melt Away」が魅力的な楽曲に思えたはずで、それは今聴きかえしてみても変わらない。というか、『Brian Wison』というアルバムを今でも変わらず気に入っている。このアルバムはなんとなく、バブリーでポップスな80年代の全てを含んだような印象があって、そしてこのアルバムによってあのダサダサな80年代のポップスが、時代に対して無効化された様な気がした。



その後のBrianの作品も聴き続けてきた。Don Wasがプロデュースした事で話題になったサントラでセルフ・カヴァー集の『I Just Wasn't Made for These Times』、Van Dyke Parksとの共演『Orange Crate Art』、この2作は純粋なソロ・アルバムと捉えるには難しいけれど、だから世評の高さとは関係無しにあまり耳にしてなかった。そしてやっとソロとしての2作目と言える『Imagination』がリリースされ、あまりにチャチな音作りにショックを受ける。その後リリースされたライブアルバムは一切無視し、3rdの『Gettin' in Over My Head』も無視する事が出来て、個人的にはBrianは過去の人と思えるようになった。ところが『SMiLE』がリリースされる。BB5の幻のアルバムをBrianが再現したもの。これにはさすがに手が出てしまい、内容も悪くなかったけど、『SMiLE』もBrianの純粋な新作とは言い難い側面がある。複雑な気持ちになった。



それから4年近く経ってリリースされた『That Lucky Old Sun』。輸入盤が店頭に並び、DVD付きのエコなパッケージと通常盤があり、通常盤でいいかと思ったけれど、熟考をしてエコなパッケージであるという事を無理やり購入の理由に仕立ててDVD付きを購入。でもDVDは見ていない。



CDの『That Lucky Old Sun』を再生して、『Brian Wison』を聴いた時の事が思い出された。楽曲、声、コーラスやアレンジ、どれもが『Brian Wison』を彷彿させる。ここに来て20年前の作品に匹敵するものを作るあたりはさすがBrianと言えると思うのだけど、そこに居心地の良さを覚えるオレはどうかしている。



まあとにかく、『That Lucky Old Sun』はオレンジ色の印象が強いジャケットの様な音楽がコーディネイトされた状態で詰まっていて、コンセプト・アルバムと呼べると思うのだけど、そういう説明がされてしまう音楽には歌の意味や時代背景やパッケージの隅々までインプットして音楽に接しなければいけないような考えにさせられるのと違って、このアルバムはは余計な事を考えずにただ聴いていれば問題ないはずで、そんな姿勢で聴いてもコンセプト・アルバムだと思わせるあたりが魅力だと思う。



しっかし、『Brian Wilson』から20年経つのか・・・。









Brian Wilson 『That Lucky Old Sun』