浅川マキ 大晦日公演 最終日

えーと、丁度1年前のログは、オレが今夜浅川マキのライブに足を運ぶ事はおかしいと思えるような内容なのだけど。でも、今回はピアノに渋谷毅がフィーチャーされているというところに惹かれてしまった。



昨年と同様かなりの入場待ち。だけど今回は、前もってチケットを購入していたので無事に着席。



まず、マキさんがステージに現れ、語りから無伴奏で歌いだす。この辺りは、場の演出もあって、完全に60年代だか70年代のアングラな雰囲気。そして昨年と同様に、Cecil Monroeが加わる。昨年と同様、異様に溌剌とした叩き・・・。全くあわない。ビックリするぐらいあわない。なんだかなと思っていると、今度は渋谷さんが加わる。その渋谷さんは、ピアノの上においてあるもので音を出す。なんとなくエレクトリックな音色。もしやカオシレーター?と思ったけれど、スケジュールのところを見るとオルガンと書いてあった。そのエレクトリックな音色で演奏に参加すると、なんとなく変わった状態の音楽。さらに、何気に気になっていたテナー・サックスの植松孝夫が加わる。そしてトロンボーンとチェロの向井滋春と、少しずつステージ上に彩りが加えられていく。

インスト陣に音楽を任せることも多く、結構ジャズらしい展開。さらに、レゲエなリズムを使った演奏もあり、昨年の印象よりも多様な展開。

休憩を挟んで2nd。まず渋谷さんが登場してピアノを弾く。無伴奏ソロ状態のところにマキさんが加わり、ここからは完全にジャズ・ヴォーカルの世界。2曲か3曲ほどデュエットで歌った後、マキさんの先導で歌が始まり、そこに渋谷さんがバックを付け、そしてステージに上がってきた植松さんのテナーがワンコーラス程度のソロ。この流れ、ここでの音、それらは聴いた事があるようで、ライブという場では耳にしていなかったジャズの音。鳥肌が立った。古いスタイルであるはずのこの流れと音は、現代的という言葉のせいで今のジャズが奏でる事のできない音。知っているつもりだったけれど、実は録音物でしか聴いてなかった音。それをオレは初めて聴いた。

その後もジャズを強く意識させる演奏が続く。少々頭の痛い存在だったMonroeも、2ndは存在感すら消す事の出来るジャズなドラム。やれるなら最初からやれよと思ったりもしたけれど、とにかく2ndのジャズとしか形容の出来ない演奏を聴いて、今日この演奏を聴くまでは「今年も終わりですね」な感想でこのログは片付くと思っていたけれど、全く違う展開になってしまった。



追記は今年見たライブのまとめての感想。




今年見たライブ合計112+1本。+1は理由あってログにしない。

さすがに100を越してしまうと思う事はタタタタあり。なので今年は印象に残ったものをまとめてみる。まずは時系列に列挙。



1/9 Complete Improvisation Night (豊住芳三郎 / 高橋悠治

1/22 渋谷毅 / 石渡明廣 / 外山明

2/18 恒松正敏グループ

3/16 池田亮司

3/28 ZU

4/12 井野信義 / 今井和雄 / 山崎比呂志

4/21 楕円の誘惑

5/3 酒井俊 / 内橋和久

5/8 島唄情け唄

5/21,22 Steve Reich

6/12 Joy Heights

7/11 八木美知依 / 佐藤允彦

8/28 Jim O'Rourke / 八木美知依 / 黒田京子 / 田中徳崇

9/21 Tokyo Conflux 2008 - 臨場感ナイト1 - 2nd

9/24 Tokyo Conflux 2008 - 臨場感ナイト2 - 2nd + アンコール

10/3,4 内乱の内覧 2008 (ちかもらち + 恐山)

10/17 The Heavymanners / Shing02

10/24 Norwegian Music - 3rd

10/29 Rhythm CHANT 〜Orquesta Nudge! Nudge! NEW Album Release Party〜

11/18 Altered States

11/19 Altered States / 高良久美子 / 今井和雄

11/29 内橋和久 / 外山明

11/29 Kato Hideki's Green Zone

12/4 Gene Coleman Birthday Live

12/7 Atomic

12/8 unbeltipo trio

12/16 芳垣・定村 Session

12/17 Satoko Fujii Four

12/27 The Groovers

12/30 浅川マキ 大晦日公演 - 2nd



日付はログを書いた日なので、ライブを見た翌日の場合もある。それとどうしても、今日に近いほど印象が強く残っているのは仕方が無い。

なんやかんやいいながら、基本、アヴァンとかフリーなものを多々見ている。明日のCDの2008ベストを見ればわかるのだけど、それが録音物に対する考え方にも影響が出てきた。

初見のものは当然印象に残りやすく、恒松正敏グループ、池田亮司Steve Reich、The Heavymannersはそういう面も含まれているかもしれない。いや、Heavymannersはそれとは関係ないな。



演奏者として印象に残ったのは、芳垣安洋とJim O'Rourkeが断トツ。そこに並びうるのは灰野敬二酒井俊、今井和雄。

Paal Nilssen-Love、Martin Brandlmayr、Chris Corsano、Jim Blackと、海外の優れたドラマーを聴く機会の多かった年だけど、それでも芳垣の存在は揺るぎなかった。ドラム奏者としては勿論、ミュージシャンとしての力量はドラムやパーカッション奏者として見るより、大友良英の様なマルチなミュージシャンと対等のものを見せ付けた。というか、音楽性の幅という意味では、大友すらも凌駕しているかもしれない。

O'Rourkeは、彼が演奏に参加する場は100%印象的なもの(この間のピットインは除くけど)になるという凄みがあり、特に臨場感ナイト2の2ndは、PNLに足りないものを悟らせつつ完璧な音像を作り上げている様な演奏だった記憶があり、それはスリリングという言葉以外に当てはめようが無かった。

序気のリストには選びにくかった灰野は、存在感が無二。外れもあるのが面白いとも言えるけど、やらなくてもいいと思うものがあるのが欠点。

酒井さんはどのライブも印象的なのだけど、あえて内橋とのデュオのみを上げてみた。客の少なさが気になってしまうことが多々あったけれど、もし、経済的にあまりライブを見る事の出来ない状況に追い込まれたら、オレが積極的に選ぶのは酒井さんのライブになると思う。表現力溢れる歌と申し分ない選曲、さらに、伴奏のためだけじゃないインスト陣。音楽に求める全ての要素がある。

あっという間に最も好きなギタリストの1人になった今井。この人のギターはかなり強烈。もしかすると最も危ないギターはこの人かもしれない。



一つのライブという意味で、この中でも特にという事なら間違いなく『楕円の誘惑』。これは、個人的には今まで見たエクスペリメンタルなライブで最も印象に残った。「演奏者は勿論、このライブの企画に携わった人達も含めて賞賛したい」と言うと偉そうなので、「こんなライブをやってくれてありがとうございます」と言いたい。但し、これを見てしまったせいで、やはりONJOはピットインでは無理があるといわざるを得ない。少なくてもSDLXぐらいの場は必要。というか、その後のONJOYCAMでの演奏以外に目立ったものが見られないことも含めて、どうなっていくのか?という懸念もある。あの地点まで音楽してしまうと、またしても方向転換が必要なんじゃないだろうか? 或いは、この名前でのユニットの継続に意味があるのだろうか? とか。まあとにかく、大友の日記を見ると来年はアンサンブル展の東京でのゲリラ的な活動を考えているとの事なので、それを楽しみにしつつ、というか、仙台とか山口に後れを取る東京のダサさに半笑いしつつ、ICCの人とか何やってんだろうな?と、思ったり。



今年は見すぎだった。来年は見る本数を意図的に減らす。今の景気から、経済的にどうかという不安もある。