Altered States / 高良久美子 / 今井和雄

「昨日は客が少なくてへこんだ」と、アンコールの冒頭に喋る内橋和久。何事にも動じない風なのに、さすがに昨日の集客は思うところあったか、と。



今日はAltered Statesの3人のそれぞれのプロジェクトと言っていたので、芳垣安洋高良久美子さん、ナスノミツルと今井和雄、そして内橋はソロか?というのがオレの予想だった。ところが、いきなりASの面々が登場して、それに高良さんが加わる。一応芳垣のプロジェクト。まあでも、そういう事か、と。そりゃ、ASのライブなんだから、これが当たり前だよなと思った。



1stは芳垣の主導という事で、ミニマルに静かにビートが刻まれていく。最近は少なくなった、ONNの静かな演奏に近い感覚。恐らくベースはアフリカの音楽。音が小さめだから、高良さんのヴィブラフォンや芳垣のアプローチが、繊細に奏でられる。ナスノはもちろん、内橋も当然それに合わせた、押さえた音使い。音が気持ち良いというのはこういう演奏だと思う。このまま、今日のライブはこのスタイルだけでいいんじゃないかと思わせる。だけど30分に満たない時間で演奏終了。



休憩を挟んで2ndはナスノのプロジェクトという名目。ここでナスノはアコースティック・ベースを使う。最近アコベを使う事がるのは知っていたけれど、オレは初めて見た。なんとなく違和感。ゲストで今井が加わる。内橋と今井というギタリストが2人いる状態。しかもどちらもオレの好きなギタリスト。どうもありがとうございますってなもん。

こんなギタリストが2人いれば、当然演奏は激しさが前面に出てくる。お互いに音をぶつけ合っている。芳垣もかなり熱の入った音を入れ込む。ナスノは途中でアコベからエレベに持ち替え。一応ナスノのプロジェクトという事になっていたけれど、流石に控えめに音楽をキープ。混沌。内橋のキレ具合が結構すさまじかった。ここまで上がっていく内橋は珍しい。それを気にしていないかのような今井。2つのギターの音を聴きながら、やはりベースになっている音が違うと確認。内橋はプログレ〜アヴァンに至った音で、今井はジャズ〜フリーインプロに向かった音。持ち味の違いでの絡み合いは、今日のライブはこのスタイルだけでいいんじゃないかと思わせる。だけど20分に満たない時間で演奏終了。



休憩を挟んで3rdは内橋のプロジェクト。ゲスト無し。「ASが僕のプロジェクトです」と。まあ、1stの時点で予想していた。

今夜も昨夜と同じように、短い時間に音楽を押し込んでいく。昨日書こうと思って忘れていたのだけど、ナスノの演奏にはギター的なものがあり、それは今までにもあったと思うけれど、音量が変わったことによって、これまでより目立つ事になった。バリトン・ギターを聴いているような、そういう印象を与える。もちろん、ナスノならではのグルーヴも健在で、この2つのアプローチがあるから両方がより引立ったとも思える。しっかし今のAS、本当にカッコいい。これまでのASで、今が一番良い状態なんじゃないかとさえ思える。今日のライブはASだけでいいんじゃないかと思わせる。だけど20分程度の時間で演奏終了。



アンコールは全員揃い踏み。「渋い演奏を」と今井に投げかける内橋。結果、渋いとは違うけれど、挑発よりも、個々の個性を上手く混ぜ合わせながらゆっくりと時間が進むような演奏になった。人によっては映像的という言葉を当てはめそうだけど、そういうものとは違うレベルで音は鳴っていたと思う。今日のライブはこのスタイルだけでいいんじゃないかと思わせる。だけど20分程度の時間で演奏終了。



それぞれのセットを多く見積もって、30分+20分+20分+20分だから、90分間の演奏時間だったという事になる。要するに短い。だけど、昨日も書いたようにオレはこの短さを肯定している。これは、演奏の充実があるからこそ。短い演奏時間で納得させる事が出来るというのは、音楽に限らず理想的。



明日はChicagoのカバー大会。勝手に内橋のセレクトだと思っていたけど、先週のBrassticksのライブの時に芳垣の希望でChicagoになった事がわかり、納得。内橋もコーラスやるらしいです。その時、笑ってもいいのでしょうか?