Adrian Sherwood

Adrian SherwoodといえばON-Uの総帥で、現代のダブ・マスターと言ってもクレームはつかないはず。Mark Stewartとともに、ダブを攻撃的なツールとして発展させた功績は大きい。だけど、単独名義のオリジナル・アルバムの発表は意外にも2003年の『Never Trust a Hippy』が初めてだった。その『Never Trust a Hippy』は元々、Real WorldからミックスCDを作って欲しいという依頼から始まったもので、Sherwoodが選択したトラックが色んな理由により使用出来ないものばかりだったため、怒りに任せて「アルバムを作らせろ」といったところ、「どうぞどうぞ」という事で作ったものらしい。RWをSherwoodがミックスするというのも興味深いけれど、それを断念する事によってSherwoodの初めてのアルバムが出来たという事につながる。だけど残念ながら『Never Trust a Hippy』は、個人的にはあまり気に入らなかった。もしかしてRWという事を意識したんじゃないかと思ってしまうぐらい、想像よりも上品な音だった。そして昨年の10月に出た2nd『Becoming a Cliche』。こっちは如何にもSherwoodな音、というかON-Uな音と言ってもいい尖った音。ただし、その尖り具合が購入時のオレにはイマイチに思えて眠らせたままだった。それをSpookyのTrojanのミックスCDを聴いた後に思い出し、久々に耳にする。そうすると購入時よりも好印象になり、「なかなかイケル」と思い始めた。

『Becoming a Cliche』は、Sherwoodの当然のルーツであるレゲエを下敷きに作ったもので、ストレートにレゲエなものもあるけれど、そうじゃないものも含まれている。もろにムンベーな「A Piece of the Earth」には笑ったけれど、6曲目の「J'ai Change」と7曲目の「You Wonder Why」は同じトラックを違う歌手に歌わせるという、レゲエ・マナーな事もやっている(その曲を続けている辺りもレゲエのワンウェイ的)。当たり前の様にどのトラックもぶっといベースとエッジの効いたリズムが鳴り響いていて、それがちょっと硬いというかデジタルな感じに聴こえるのだけれど、ラガ・マナーな歌手達の声がそれを絶妙に中和させている。









Adrian Sherwood 『Becoming a Cliche』




多分オレは『Becoming a Cliche』の日本盤を発売日に買っていて、だから初回限定の2枚組仕様を持っている。その2枚組のもう一枚は、『Dub Cliche』というダブ・アルバム。『Becoming a Cliche』のダブ・バージョンかと思ってしまうけれど、実際には『Becoming a Cliche』からは6曲しか使われてなく、他は別のSherwoodがらみの曲のダブ・バージョン(らしい)。オレには出展不明な楽曲ばかりだけど、Sherwoodのダブに思いっきり浸る事が出来るのだから、そんな事はどうでもいい。



今の時点では日本盤の『Becoming a Cliche / Dub Cliche』な2枚組は手に入りにくいけれど、『Dub Cliche』はそのうち単独でも発売されるとのこと。まあ、輸入盤の『Becoming a Cliche / Dub Cliche』でもいいと思うけれど、日本盤が2枚組で¥3,000を切っているのに、輸入盤にそれより高い金額は出しにくいはず。円は安くなるし、ユーロは高いし、今後はEUプレスなものは手を出しにくい。