Donald Fagen

オレはSteely Danというバンドが嫌いというか苦手で、名盤の誉れ高い『Aja』と『Gaucho』を持ってはいるのだけど、殆ど聴いていない。『Aja』は20歳ぐらいの時に一度手に入れて手放し、1999年の新リマスター時に再度購入した。改めて聴けば感触が変わるかもしれないと思って購入したのだけど、やっぱりうけつけられず、「たまたま『Aja』が駄目なだけでは?」と思い直し、『Gaucho』を購入。だけど印象は殆ど変わらなかった。

実はSDを聴く前にDonald Fagenのソロ『Nightfly』を高校生の頃に聴いていて、それはオレにジャズを教え込んだレコード屋のお姉さんの薦めで買った物だった。その時は良いとも悪いともどっちつかずな印象。その後誰かに貸して、そのまま行方不明になった(別に惜しくなかった)。

まあ、そういうことなので、普通ならFagenの新作『Morph the Cat』を見ても素通りするところだけど(実際、『Kamakiriad』やSDの復活作『Everything Must Go』の時は見向きもしなかった)、今回はJaco等のフュージョンな音をクリアしたという実績もあり、もしかしたらいけるかもしれないと考え、購入に至った。



ということで、とにかく『Morph the Cat』を聴いてみた。「ああ」とか思う。やはりAORというイメージに当て嵌まった音。少しR&Bで、少しジャジー。どの曲もミドル〜若干スローぐらいのテンポ。演奏に抜かりは無く、わかりやすいメロに、適度なソロ。気分が高揚しないぐらいのバックコーラス。ちょっと嫌味ったらしい書き方だけど、ホントにそういう音なのだから仕方が無い。5年ほど前なら「10年ぐらい寝てて下さい」と、封印しているはず。

だけど、ここまで主張を感じない音というのは、オレの手持ちでは珍しい。雰囲気に溶ける音だと思う。だからこれ、流していても、何の邪魔にもならない(毒にも薬にもならないけど)。恐らく、完璧なBGMとして機能する。というか、している。というのも、iPodに入れて仕事の帰りに聴いてみたのだけど、これを聴いていたという記憶が全然残っていなかった。ウチについてiPodの再生を止めた時、「そうだった」と気付いた。

完璧なBGM。簡単そうで実は難しい事なのに、Fagenの音楽はそういう機能を持ち合わせていた。




こういう音の聴き方もあるんだなと認識して、じゃあ久々に、と、SDを聴いてみる。SDもFagenも大差ないはずだから、それなりに聴けるだろうと思った。それが大間違い。SDの音は今聴くと古い。とくにメロはきつくて、オレはこれを聴いていると、80年代の煌びやかで安っぽい情景が浮かぶ(BGM化してくれない)。AORがBGMに使われるパーラメントという煙草のCMを見たことがあるだろうか?、SDはあのCMにピッタリだと思う(あくまで『Aja』と『Gaucho』のみの話)。