Mr.Children

投稿の流れ的に見ても無理があるけど、別に笑かそうと思っているわけじゃ無い。そもそもオレは、売れていようが売れてなかろうが、音楽は面白ければいいと思っている。今までこのミスチルというバンドの曲をマトモに聴いた事は無かった。多分CMで流れている曲のサビとか、カラオケで誰かが歌っているのを聴いたぐらい。それによって聴いてみたくなるという事は無かった。じゃあなぜ今ミスチルなのかと言うと、オレが普段少しだけ音楽の話とかをしてもまるで興味を示さない知り合いの子が、「ミスチルのコンサートに行った / 桜井の指輪が見える距離だった」と喜んでいて、その子をそこまで喜ばせるこのミスチルというバンドの魅力は何なのだろう?と思った。もしそれがB'zとかGrayだったら「ふうん」で済ませていたと思うけれど。どのアルバムが面白いのか聞くと、『Mr.Children 1992-1995』と『I Love U』がいいと言う。さすがにそれを買うのはなんなので、珍しくCDレンタルを使って聴いてみた。

『1992-1995』は多分初期のヒット曲集。サビの部分に関して言えばオレでも聴き覚えのあるものばかり。だけど今回初めてフルレングスで聴いて、90年代にしてはチープな音、そしてAメロがメタメタな曲が耳につく。どうもこのバンドの殆どの楽曲はヴォーカルの桜井和寿が手がけているようで、彼の書く字余りの歌詞は佐野元春尾崎豊の影響だと思えるのだけど、元春のリズム感、尾崎のフォーク調な語感に比べると桜井のそれは強引(過ぎる)。さらにコミカル風味な歌詞は岡村靖之的。メロはポップでわかりやすいものが多いのだけど、桜井の歌い方は自分の書いたメロを壊してしまっている。また、この頃はまだまだ若かったという事か、歌詞も「は?」と思わせるものがあり、特に「シーソーゲーム」という曲のサラリーマンをバカにしているとしか受け取れない部分や、自虐ネタか?と思わせる「退屈なヒットチャートにドロップキック」(前日の投稿のマトメはここへの伏線)というのを聴いて笑ってしまった。

『1992-1995』に収めれた楽曲から10以上年経った『I Love U』(このバンドがYouをUにするのは似合わなさ過ぎる・・・)というアルバムは、音の取り扱いは流石にマトモになってきている。音楽的にも少し色気を出していて、『1992-1995』に比べればバラエティ豊かという言い方があてはまるけど、とってつけた感はあるし、歌の内容に特に変化は見られない。

ここまで聴いて、気になったのはやはり桜井の歌。この少し鼻にかかったというか舌足らずと言える声、必要以上にアーとかオーとか言う癖、とても上手い歌手と言えるものではない。ポップな曲でのこの声は杉真理と思い浮かばせ、そういう楽曲だといえる「Over」とか「Cross Road」(多分この二曲がミスチルファンの子のお気に入り)は、曲メロまで杉真理的。

まるで何一つ褒めていないけど、率直な感想だから仕方が無い。だけどこのバンドはビッグ・ビジネス、多くの日本人にとってのコモン・センス。オレから見れば中庸なこの音のどこに多くの人が惹きつけられるのか考えると、多分オレが書いた事のそのままがこのバンドを支持する人の琴線に触れている。それをまとめると「危うさ」だと思う。ちょっとハズカシめの歌詞、上手い歌手とデュエットでもしたら厳しそうな歌声、バンドとしての存在意義の低さ、それがわかりやすいサビのメロだけで繋ぎ止められている。ミスチルという名前で曲を書いてくれば、恐らくすぐに覚えられるサビを書いてくるだろうという安心感、それ以外は実は何の保証も無い雰囲気。多分それがこのバンドの持ち味で、実は表裏一体な存在という事が、このバンドの魅力なのだと思う。

何かを出せばある程度売れるという状態であることは、ビジネスとしてみれば成功だろうけれど、音楽というものはそれ以上の何かを含む部分があるはず。だから彼らはこのバンドをずっと聴き続けているリスナーに対して、なんらかの責任はあるはず。それはこのバンドが成長する事によって、そのリスナー達の「聴く」という行為に成長を促す事になるはず。本当は必ずしもそういうところまで面倒を見る必要は無いのかもしれないけれど、少なくてもB'zとかGrayといったバンドよりはマトモな音楽性を持っていると思えるから、その部分をオレは要求したい。そうなるにはまず、Boy Meets Girlな内容から、年齢なりの赤裸々な事を歌う必要があるし、桜井の歌い方も、無理を止めた歌い方にシフトするべきだと思う。

多くのリスナーを得る事、それによって大きな金を手にした事は、本人達の自覚を抜きにして、公人としての責任が付きまとう。例えば彼らが、「ミスチルを聴いて音楽を始めました」というバンドが現れる事を望むならば、今の場所からの何ステップかが必要なはず。