Elvis Costello / Allen Toussaint

ここのところのElvis Costelloディスコグラフィー的なものは聴いてなかった。連名的なものが多く、しかもロックから外れた様なものが多いからだ。デビューから80年代、そして90年代の中盤あたりまでのCostelloのアルバムはタテノリの音と、スローな曲のバランスが良いものが多く、どれも楽しめるものだった。ところがBrodsky Quartetと共演した『Juliet Letters』の様なアルバムを作ったりというもう一つの面も姿を見せだして、それ以降はあまり面白く思えないものも増えてきた。そして日本では、良くも悪くも「She」や「Smile」の様な楽曲によって、ロックに興味の無い層にも名前が知れ渡る事になり、その頃オレにCostelloのCDを貸してほしいと言ってくる輩が何人か居た(そんな奴らには『This Year's Model』か『King of America』を貸した)。

という事で最近はあまり注目していなかった。今回もAllen Toussaintとの連名アルバム『River in Reverse』は、ジャケットを見て「・・・」と思ったので少し悩んだ。だけど最終的には購入に至った。

Allen Toussaintは、その名前を目にする事は多々あった。だけど、ニュー・オリンズ的な要素の音にあまり興味がそそられないという事もあって、これまで意識して耳にした事は無かった。

『River in Reverse』は、ニュー・オリンズ的なR&Bとでも言えばいいのか、そういう音に、Costelloの歌が乗るというもの。Allenがリードを取るものもあるけれど、Costelloのアクの強い歌声は、幸福感溢れるR&Bといえるニュー・オリンズR&Bの上でもその個性を消す事は無く、Allenの歌声に比べれば若干ミスマッチかとも思えるけれど、Costelloファンのオレにとってはここのところのどの録音よりも面白く、力強く聴こえて、まだまだCostelloを眼中から外す事は難しくなった.









Elvis Costello / Allen Toussaint 『River in Reverse』




今回オレが購入したのはDVD付きの国内盤。DVDはドキュメンタリーになっているので、DVDを見る事を前提にしたら国内盤を買う必要があった。

そのDVDはニュー・オリンズに戻っての録音のシーン等が含まれている。そして、当然のようにカトリーヌの事についても言及している。Allenが「不幸の後には大きな幸福があるはず」と語るシーンは、少し楽観的すぎると思ったけれど、でも下を向くだけでなく、そういう発言をする必要もあるという事なのだろう。

そのカトリーヌの事は、色々思う事がある。個人的には直接ニュー・オリンズの音楽に興味は無くても、ジャズ・ファンを自認している立場では、間接的ながらもニュー・オリンズという場所は大きな意味を持っている。そのニュー・オリンズに降り掛かった厄災について、当然気になっていたけれど、だけど例えばアメリカよりもっと近いスマトラ沖地震での災害や、この長雨での国内での災害を見ぬフリして、ニュー・オリンズにのみ目を向けるという事は、オレが音楽ファンだという事を差し引いても何かおかしい気がしている。



ちなみにこのアルバム、購入を迷っていたオレを最終的にプッシュしたのは、プロデュースがJoe Henryだったという事。Henry自身のアルバムはもちろん素晴らしいのだけど、彼がプロデュースしたSolomon Burkeの『Don't Give Up on Me 』が素晴らしい作品だった。今、アメリカ深部の音を表現する事に、最も長けた存在だと思う。