R.I.P. Kevin Ayers

訃報を受けて、まず頭に浮かんだのは1度だけ見ることが出来たライブの事。4〜5年前だったか、と思い、ログを確認したのだけど、何故かログが無い。まさかと思ってメールを検索して、チケットの購入記録でわかった。2004/5/17 19:00開演、o-west。だった。もう9年近く前の事だったのか。ログを書くようになる以前だったので、そら、当然見当たらない。
前に書いたこととダブるけど、追悼なのでそんなもん。オレがKevin Ayersを聴くきっかけになったのは『Falling Up』。当時、新作として手に入れた。まだ高校なクソガキの頃の話。確か渋谷陽一のラジオでその中の曲を聴いて、名前も知らなかったAyersのCDが欲しくなって、金の無いクソガキはその少ない手持ちをよくわからない人に使っていいのか?とか考えつつも、ラジオで聴いた曲を求めてそれを買った。『Falling Up』は女性コーラスを従えてきらびやかに幕を開ける。まるでAOR。この感じ、Dylanのこういうの、思いっきりしくじっているのとかあるのだけど、Ayersのアダルトな声は嵌っている。して、最大の目当ては4曲目に入っている。「Just Another Rolling Stone」だった。

ガキな頃に買ったモノは、気に入ろうがそうじゃなかろうが、30回ぐらいは聴いたはずで、『Falling Up』はそれを何倍かしているはず。Ayersを知ったから、Soft Machineを知り、ある時期にはWild FlowersのCDまで買い求めるに至る。のだけど、結局『Falling Up』と、もう1枚、『Still Life with Guitar』が多分ずっと耳に残る。失礼なことにオレは『Falling Up』を一度手放している。若いころ、金が無くてヤバすぎだったころ、換金できる財産はCDだけだった。ので、何度も繰り返した『Falling Up』は「聴かなくてもわかる」という理由で手放すものの1枚にした。けど、『Still Life with Guitar』は手放せなかった。こっちはリマスターされようがなんだろうが、今持っているこの盤が大事。『Still Life with Guitar』には、オレが初めてサイン会というものに足向けをして手に入れたAyersのサインが入っている。新宿のユニオンで買った『Still Life with Guitar』には、その数日後の下北のユニオンで行われるAyersのサイン会のチケットが付いてきた。ユニオンの店員に、「数が少ないので必ず行ってくださいね!」と念押しされたりした。当日、ちゃんとそこに向かった。サイン会の前に数曲、ライブ演奏。Ayersと、もう一人、ギター奏者。今にしても思えばOllie Halsallだったのだろうか?、それともその頃には・・・だったか? CDを1枚買っただけで、生歌が聴けてサインまでもらえる。してサイン会。並んで順番を待つ。少しずつAyersに近づく。他の人がサインをもらっている様子を眺めつつ考えていた。『Still Life with Guitar』のどこにサインをもらうか? みな、ジャケットかブックレットに書いてもらっている。目に見えるところに欲しいので、ジャケットって思ったけれど、当時のオレは結構しつこくジャケットを取り出してはブックレットに目を通していた。ので、ジャケットだとサインが擦り減らないか?、と。とか考えていると順番が来た。慌ててCDケースを分解して、裏ジャケを取り出した。ここなら目につくし、摩擦も少ない。我ながら素早い分解だった。それをAyersに差し出す。すると隣に座っていた通訳らしき人が「お名前は?」と訊いてくる。「○○です」と答えるとそれをローマ字にして手元に書く。それをAyersが見て、名前を書いてくれる。海外のロックなミュージシャン、それも、そこそこその歴史的なところに係わる人。が、サイン会ってのすら信じられないのに、わざわざそれぞれの名前も書いてくれる。そして握手。「Thank You Very Much」しか言葉が思い浮かばない。Ayersはそれに軽く微笑んでくれた。
実は2004年のライブの事はしっかりとは覚えていない。サイン会の時の方が記憶は鮮明だったりする。んー、そうか。ライブを見るよりサイン会と数曲の演奏の方が記憶に残るって事は、某秋葉系のアイドルを筆頭としたあのやり口、やっぱ商売としては上手い手なんだとか、わき道が頭に浮かぶ。
昨夜の訃報から、今のところKevin Ayersしか再生していない。オリジナルアルバムとしてリリースされてCDになったものは大体持っているのだけど、MP3にしてあるのの中に、何故かソロ初期のものは少なく、あー多分それがオレがAyersに対する気持ちなんだな、と、思う。なんかまさかこんなにAyersの音が好きだったとは、自分でも気づかんかった。