Joe Morris / Nate Wooley

単音で、アヴァンなエフェクトも使わずにギターを弾くJoe Morris。この人のスタイルはCharlie ChristianJim Hall 〜 Pat Martinoという系譜の究極に近い、というか、ほぼ究極だと思っている。いつか、どこかで、限界が来て、音楽のやり方が変わるんだろうと思いながら10年以上聴き続けている。録音物でしか接することの出来ていない奏者だけど、殆ど変わらないそのやり方に、飽きることが全く無い。なんだろうこのギターは?って、思う。ほぼ単音であまりエフェクトを使わずにフリーな演奏を続けるって、並大抵、じゃない。っていうか、他にここまでの人は、オレには見当たらない。けど、新作の『Tooth & Nail』のジャケットを見た時、これはもしかしてジャジーなスタイルかも知れない。って、思った。連名のNate Wooleyは全く知らんのだけど、なんか、ジャジーなニオイがした。けど、『Tooth & Nail』は、インプロだった。Morrisは全編、多分アコギ。それを、いつものように細かく、音を連ねる。けど、それだけじゃなくて、摩ったり、何かを挟んで弾いたりという、インプロの手法も取り入れつつ。これまでにそういうのが皆無だったとは言わないけれど、『Tooth & Nail』でのそのやり方は、それを際立たせるようなやり方と、思う。それに絡むWooleyのラッパは、この楽器がこれまでにいろんなところを漁って、その結果、この楽器単体で出せる音に拘る事で楽器の持つ雰囲気を活かした方便を使っているように思う。
Joe Morrisのデュオ作というと、個人的にMorrisの名前を意識する事を避けられなくなったMatthew Shippとの『Thesis』が印象的だったのだけど、それは一卵双生児のような音の絡みの緊張感という圧迫でドコアと言いたい凄みがあったけれど、『Tooth & Nail』はそれよりスピードを落とし、そもそもの楽器の個性がお互いの音色の対比という面も際立たせていて『Thesis』の様なストイックから外れているように見えるのだけど、何度も繰り返すうちに、この作品の音も『Thesis』と同質の厳しさを、思う。