ブルース

明けました。おめでとうございました。よかったですね、無事明けて。
東京に住んでいて、12/30から今日までぐらいが一番好きな時期。この時期はさすがに静か。住処の目の前の山手通りも、走る車の数がビックリするぐらいに少ない。閑散とした東京は「世界中でたった一人だけ取り残された気がして」って歌詞を思い出す。
今日の一番の楽しみは天皇杯だったのだけど、残念ながら清水は負けた。健太の最後の試合は優勝で終えて欲しかった。サッカーしてたものにとって静岡、それも清水は特別。エスパルスのファンではないけれど、何かあると応援してしまう。なので残念だけど、来シーズンは是非Jリーグを制してくれ。って、オレがエールを送るのはおかしいか・・・。
「じゃずじゃ」復活だそうで、めでたい。しっかし、CDジャーナルか・・・。MMを読むのを止めて以降、紙媒体の音楽情報誌は全く目にしていないのだけど、このブログを時々チェックしている知人がCDジャーナルの定期購読者で、ここを見たからと言って全然影響されないくせにミュージシャンの名前だけは覚えるらしく、そういう記事が出るとその部分をPDFにして送ってくれていて、それでFrictionだったり内橋和久だったり頭脳警察だったり、浅川マキさんの記事なんかを実は見ている。CDジャーナルっていう名前がどうもデータ主義っぽい名前に思えて自分では目にした事なかったのだけど、そういうところもフォローしている事を知って、少しだけ気になっていた。なので仕方が無い、2月号からオレも買うことにしよう。
新年早々に耳と目にしたのはブルース。が、ジャンルじゃない。じゃずじゃーにとってはブルースと言えばBruce Cockburnだろうけど、オレにとってはやはりBruce Springsteen。じゃずじゃー失格かも知らんけど、これは曲げられない曲がらない、無理。しつこいけど、Springsteenを聴いているのはダサいという風潮があった頃(今もか?)はオレも聴いてないフリをして、でも、聴いていた。聴き続けた。ている。る。これを平気で言えるようになったのも、Ill-BostinoがJapanese Synchro System名義で「I'm on Fire」をカバーしてたからで、オレ等の世代でSpringsteenに影響を受けたのは当たり前で、別にそれを知らん顔する必要ないよなあって思った。しかもSpringsteenは昔の話じゃなくて、聴き続けているし。
『Darkness on the Edge of Town』の拡大版、『The Promise:The Darkness on the Edge of Town Story』がリリースされて、これは躊躇無く日本盤を購入。『Darkness on the Edge of Town』のリマスターとそのセッション時の未発表集、更にそのセッションのドキュメンタリーDVDと、現在のバンドでの『Darkness on the Edge of Town』の再演DVD、そして当時のライブ映像のDVDと、かなりのボリューム。これを今日1日で見て聴いた。『Born to Run』での大きな成功後の訴訟問題の件からドキュメンタリーは始まる。それによって勢いで録音を行えず、その結果生まれたのが『Darkness on the Edge of Town』。『Born to Run』のキャッチーさを弱めてまでもSpringsteenが自分の足元に拘って作り上げた作品。ここで語られるいろんなことの中で、「Factory」が自らの父親を歌っている事を話す。Springsteenの父親は爆音の工場で働き続けた事で耳が聞こえないらしい。それを見て自分の父親の事を思い出した。オレの父親も工場で怪我をしている。利き腕の右手の中指と薬指の第二関節から先が無い。夜中、1人で仕事をしている時に指を挟まれ、そういう状態になった。夜中で1人なので、指が千切れた状態で自ら車を運転して病院に行ったとか。だけどそれはオレが生まれる前の話なので、その事は後で母親から聞いて知った。他人から見ればおかしな状態の父親の右手だけど、オレにはそれは当たり前の状態。前に指が足りないピアニストの話があったけど、他人から見ればおかしな状態も、実はそれに接し続けているその周りの人間には、それは別に当たり前の事だったりする。オレの父親はオレよりちゃんと字が書けるし、普段の生活を送っている分には特に不自由もしないぐらいに、その状態を受け入れている。普通にオレとキャッチボールもしていたし。
話が逸れたけど、大きな成功を手に入れて、そこから大きな態度に変わっていくのは多分簡単なことで、それまでの自分の後ろ盾を足枷に思うようになるのは、別にミュージシャンじゃなくても、リーマンな世界でもよくある話。でもSpringsteenは自分の立脚するところに拘った。だからオレは今でもSpringsteenの曲を聴いていられる。のだと思う。
とか書きながら、だからと言って詳しく色々知っていないのがオレのいい加減なところで、あの「Because the Night」はPatti Smithへの書き下ろしだと思っていたら、実はこのセッションの中の1曲だったことを初めて知った・・・。「Because the Night」のSpringsteenのバージョンは『Live 1975-85』に入っているライブバージョンしか知らなかったけど、今回の未発表曲集にスタジオテイクが収録されているし、同じくライブバージョンしか披露されていなかった「Fire」のスタジオテイクも入っている。
実は久々に聴いた『Darkness on the Edge of Town』だけど、これ、ファンの間では傑作として扱われる作品なのだけど、個人的にはそうかどうかはわからん。というのも、オレは多分これからもSpringsteenの新作が出れば手にする。そのキャリアをこれからも聴くつもりなので、傑作であろうがそうじゃなかろうが、どうでもいい。
現在のE Street Bandで『Darkness on the Edge of Town』を再演する映像を見ると、Springsteenが1.5倍、Steven Van Zandtにいたっては2倍ぐらいの線の太さになっているのだけど、そのVan Zandtのあの目は相変わらずで、それがカッコいいんだよな。