Fishmans

思うところあって『Long Season』を聴きなおしている。ここの虚脱感はあの時代を体現。後ろを振り返る事が出来ず、だけどイケイケで前に進む事はもっと出来ず、それがやるせなくもあるのだけどその事のリアリティーが欠如しているような、捉えどころの無さ。トラック表記的には5つのトラックになっているのだけど、その3番目の中盤から挿入されるリズムのブレイクがアフリカン〜ラテンなアプロ−チで、時代的には単純にドラムン・ベースのあれであってもおかしくなかったはずなのにそうじゃない。だけどこれ、微妙に聴こえる電子音がムンベーを独自解釈したAphex Twinのドリルン・ベースに混じっているノイズの様で、やはりここはこのバンドによるムンベーの解釈なんだと気付き、余計に90年代を強く意識させる。これは録音物ならではの成果なのだけど、この曲を『98.12.28 男達の別れ』で40分を超える演奏で再現していて、そこにはギターの音などに幾らか肉体性が出ているのだけど、押し付けがましくない感じが、らしさ。



90年前後のフジテレビの深夜ドラマ、その中の『青春もの』と『90日間トテナムパブ』は印象深い。『青春もの』はSugarの「If I Can't Change Your Mind」で、『90日間トテナムパブ』は「100ミリちょっとの」だった。



「100ミリちょっとの」はFishmansの曲。この曲は凄く気に入って、当然そのCDが欲しくなったのだけど、確かシングルは出ていてもこの曲の入ったアルバムはリリースされていなくて、短冊なシングルを買う気になれなかった事もあって、それを手にせずそのままになった。

そこから数年後、『Long Season』がリリースされる。なんとなく手にする。35分の1曲入りのアルバムという扱い。あの緩い音のバンドに35分の曲というイメージに無かったのだけど、オレが持っていたイメージの音で35分の曲をやり抜いていて、こういうの、なかなか他には見当たらないよなあとか、そういう感想が残った。

でもその前のアルバムを手にせず、そして『宇宙 日本 世田谷』も保留。だけどマキシ・シングルの『Walking in the Rhythm』を手に。これを気に入り(特に「Walking in the Rhythm (Shinjuku-Version 2 Mix)」)、結局『宇宙 日本 世田谷』も購入する。その後『8月の現状』、そして1曲入りのシングル『ゆらめき in the Air』。

そうこうするうちに「100ミリちょっとの」が久しぶりに聴きたくなって、タイミングよく『1991-1994 Singles & More』がリリースされ、あまりベスト盤は好んでなかったのだけど、まあいいかと。

そこから少し経ってFishmansのボーカルの逝去を知った。



Fishmansというバンド、結局オレにはかすり続けた。その後リリースされた『98.12.28 男達の別れ』とか『8月の現状』、『いかれたBaby / 感謝 (驚) / Weather Report』等のライブ録音を聴いているとああいう最後を選ぶような雰囲気は感じられない。

このバンドの音は個性はあってもアクが無くて、『空中キャンプ』のジャケットの様な浮遊感がつきまとう。



「100ミリちょっとの」以外は殆ど聴いていない『1991-1994 Singles & More』も勢いで聴いてみる。元々レゲエがベースにあるこのバンドの多様性がパッケージされていて、『Long Season』以降にある空間的な音の配置とは違うのだけど、ここにそれ以後の変化の前兆を無理やり嗅ぎ取ってみたりしながら、やっぱ「100ミリちょっとの」はいい曲だなあ、とか。



しっかし、モロに前フリなログだな。