「マリアンヌ」から「I LOVE HONZI」まで

こまっちゃクレズマにフィーチャーされた早川義夫の歌を聴いて、その1回で満足する気にならなかったのでまた絶対に、今度は早川さんの冠のライブに行こうと思った。それは別にすぐにという事にしていたわけじゃないのだけど、早川さんのHPでライブのスケジュールをチェックして、今夜のライブを見つける。後ろを固めるのは、今では早川さんのパートナーという存在らしいギターの佐久間正英、ベースに柏原譲、ドラムに茂木欣一。このリズム隊、Fishmansのリズム隊。HONZIが繋げたこの人脈を見て、何も思わないほど不感症ではなく、月曜でしかも吉祥寺のスターパインズカフェというのはオレにとっては好条件ではないけれど、さらにJacksのメンバーだったギターの水橋春夫までゲスト扱いで名を連ねている。これに行かないと後悔するのは目に見えていたので、それを避けた。



Fishmansのリズム隊によるバックアップという事を頭に置くと、多分、空間的な洗練されたリズムの装飾になると思っていた。そう思うのは早川さんの歌をこまっちゃクレズマの音で聴いたことも影響しているのだけど、実際はブルージーさも兼ね備えたロック的な強さ。ここでやっと、Jacksというバンドが日本のロックのなんたらかんたらと言われる事の納得がくる。



ギターの佐久間さんは色んなところでその名を見る事の出来る人で、オレはそういう人をライブで見たいという欲求は持ちにくいのだけど、そのギターの発する説得力で考えを改める。色んなギターを聴いてきたし、基本的にアヴァン寄りの音を好んできたけれど、佐久間さんのギターにそういう要素は感じず、とにかくハッキリとしたギターを曲の中に埋め込んでくる。小細工の無い感じといえばいいのか、キャリアが得た音なのだろうけれど、ちゃんと現在の音のギターで、イチイチ気になる。MIDI(?)なリコーダーとかピアニカも扱うし、基本的に立って演奏している姿もロックなギタリストらしくてカッコいい。

リズム隊の2人も極めて個性的という風ではない。配置の関係で真ん中にするドラムの茂木はいいとしても、柏原は佐久間さん後ろでスツールに座って弾いているらしく、オレの視界には全然入らない。なので茂木に目を向けると、喜々として演奏している姿が印象的。自分が演奏する必要なの無いところでは早川さんの歌を聴きながら体を動かす。微笑ましくもあるその感じはカッコよくも見える。目線をステージから外して音を聴いて、ベースとドラムが歌う為の音を一つで表現しようとしているように思った。いつも各々の楽器の個を探そうとしてベースとドラムを分けて聴いてしまう癖があるのだけど、そうじゃなくて、二つの楽器で一つの表情になるというかちゃんとつながっていて、歌モノの伴奏というものがどういう事か、気づかせる。とか書くと、わかった風。

ライブは2部構成で、休憩を挟んだ2ndの頭からゲスト扱いの水橋さんが登場。ツイン・ギターな状態は、サイケデリックな音を扱う水橋さんと佐久間さんの個性の違いがあって、音楽の表情も変わる。そして水橋さんはJacksの時に書いた曲ではボーカルも。その曲はそれ以外の曲と比べるとGS風味で、ギターの音とともに場に変化を与えていた。



頭に入っていない曲が多かったのだけど、歌われる言葉の次の言葉がメロにあてはめずに素直に紡がれていて、なんとなく次の言葉を勝手に頭に浮かべるとその言葉が歌われる。その言葉の連なりを早川さんが個性的な歌声で発するのだけど、初めに言葉ありきの歌だからと思えるメロディーが持つ洗練されていない部分が、だからこそ印象深くなり、研磨されて洗練されていくものが似たような印象になっていく事とは逆の、強烈な個。



アンコールでは再び水橋さんが加わり、2回目のアンコールでは早川さんと佐久間さんのデュオ。おそらくこの2人での演奏というのが今の早川さん骨格だと思うので、それを見る機会が必要。でもスケジュールをチェックすると、とりあえず行けそうなのが無い。まあ、ゆっくり。



あ、そういえば今夜はJacksのメンバーだった木田高介氏の命日だったとか。そんな日にライブというのは偶然らしいのだけど、偶然というは必然という意味なのかも知れない。



あ、もう一個そういえば、PA担当はZAKだった。早川さんのMCで判明した事なのだけど、でも途中でなんとなくそんな気がした。それは音の事だけじゃなくてFishmansつながりと言うかHONZIつながりと言うか、そいう事で勘付いたのだけど、ホントにZAKだったって聞くと、なんか得した気分になってしまう。なんかな。