Tha Blue Herb

DVD2枚組を一気に見る行為は、見ているだけなのに色々と消耗する。結構疲れた・・・。



前回のDVD『That's the Way Hope Goes』は、TBHというイメージを保持するかのような内容で、その頑なさに「もっと肩の力抜けばいいのに」という印象が残っている。

昨年の秋のツアーをドキュメンタリーとして捉えた『Straight Days / Autumn Brightness Tour'08』は、その印象を覆させる。特に1枚目、東京に至るまでのツアーを密着し、ライブだけじゃなくオフの姿も交えて記録していった映像でみるBOSSは、TBHのイメージから拍子抜けするぐらい、温厚な人柄。多分それは歳を重ねた事と、そのツアーが自分に近い人達の手によって行われている事によって引き出されたのだと思う。

このディスクで特に印象的なのは浜松でのライブシーン。そこでBOSSは、不本意ながらもステージ上から客に注意をする事になる。同じ金額を出してライブを楽しみに来ている誰かを、別の誰かが邪魔する事を許さなかった。演奏中にフロアに気を払いそれを正そうとする姿に、BOSSという男の立ち居地を感じる。オレが今まで見たライブで、こういうミュージシャンの姿は見た事が無い。それはミュージシャンに限らず、ライブの関係者の誰かが持っているべき姿勢だと思うのだけど。

2枚目のディスクは最終日のリキッドルームでのライブをパッケージしたもの。リキッドをホームグラウンドと呼ぶBOSSにはあのVS東京の姿は見られないけれど、ここでも、一部の音楽評論家連中に対する歯に衣着せぬ言葉は健在で、相変わらずの部分も残っている。



気になるところもある。例えばBOSSのライブのラップの声は、1stアルバムの頃の様な劇画調とでも言える声の使い方になっていて、その後の、厳しくも知性のあるラップと声のBOSSは少ない。それは、DVDを見ていると言う立場では少し興が削がれる部分。そして、特にリキッドに顕著なのだけど、B系の客が少ない。ボーダーレスになっていく事は音楽の理想的な姿なのだけど、1DJ1MCという最もシンプルなヒップホップのスタイルでありながら、そこの聴衆が少ないという事は軽い違和感を感じる。



BOSSのラップする内容は、他のヒップホップに比べれば明らかに知的で、そして挑発的。その姿は音楽のスタイルを外せば、オレなんかには尾崎豊に通ずるものを感じる。メッセージの強さを受け取る若い連中はそれだけでBOSSを特別視し、そして毛嫌いするはずで、そこがTBHのリスナーになるかなからないかの分かれ目かもしれない。

BOSSと同世代のオレは、BOSSの吐く言葉に自分が思ってきた事を重ねて、「この夜だけは」という曲の気持ちを理解する。そしてチベット沖縄アイヌの事を言う姿は、他の日本のミュージシャンには見られないその行為に安心する。やっぱり稀有だと思う。





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Tha Blue Herb 『Straight Days / Autumn Brightness Tour'08』