今井和雄トリオ

昨夜はピットインでは今井和雄トリオのライブがあった(はず)。Talonか今井和雄トリオか悩んだのだけど、結果はTalon。今井のギターは今のオレにとっては一番好きなギターかもしれないのに、そういう事になってしまった。それは、来月SDLXでsim+大友良英カップリングのライブがある事がわかっていたので、そこまでの我慢とする事が出来る事が決定打。もしそれが無かったら、当日ギリギリまで悩んだはず。なので大きくは重ならなくても、多少は客層が重なる気がするところがもったいない。あ、でも、そんな事を悩んだのはオレ1人かも知らんけど。

と思いながら某レーベルのブログを見ると、その前のレディージェーンでの客足も悪かったようで。LJで演奏があるのは知っていたのだけど、個人的にLJは敷居が高く、なかなか足を向けにくい。昨年のMarco Cappelliの時は意を決して行ったのだけど、もしGrid605に出入り禁止にされなければ足を向ける事はなかったし、一度足を踏み入れたのにも拘らず二回目を実行しにくいのは、あそこのスペースを考えて、適当な時間に行ったらとんでもない状態で聴く羽目になる可能性があったり、それどころか入れないんじゃないか?という懸念もあって、なかなか。なので客が少なかったと聞くと、やはり足を向けるべきだったと、結構大きめの後悔。



昨年数回のライブで音を聴いただけで、最も好きなギタリストの1人になってしまった今井和雄。その今井とオプトロンの伊東篤宏、自作エレクトロニクスの鈴木學によるトリオが今井和雄トリオで、2人の発するノイズの中を今井がフリーインプロではなくジャズギターを弾くというコンセプトを持ったグループ。そのトリオの初作『Blood』は昨年リリースされ、CD+DVDという、個人的にはあまり好まない抱合わせの作品。だけど、このトリオに関してはこのやり方は肯定。それは、オプトロンという楽器が視覚的にも意味のあるものだからで、だから珍しく、『Blood』を手に入れたときはDVDを先に見てしまった。通常のライブでの動きのある姿とは異なるけれど、それでもノイズを発する蛍光灯の面白さは、初見の人にも伝わるはず。ちなみにこのDVDの撮影は大友良英ドキュメンタリー映画ロッテルダム国際映画祭で話題になった岩井主税。でも、この映像が作品としても面白いかどうかはそれぞれ。

音楽の印象は当然CDから。だけどこの作品を聴いて思った素直な事は書きにくい。書くけど。書きにくいのは、Jazz Tokyoの2008ベストで横井和江さんがこの作品を選んでいて、そのコメントに書いてある事と同様の事をオレも感たからで、ライブでのこのグループの音は、ノイズの中に埋もれ気味の今井のギターが、ある瞬間、ふと浮き上がってくる印象。それがグループの音のコントロールによるものなのか、それとも、聴いている側がノイズの中からギターの音を捕まえに行くせいなのかはわからず、だからそこが面白さでもあるのだけど、このCDではその趣が異なり、ダイレクトにギターの音が伝わってくる。スタジオ・ライブ形式で取られたとは言っても、音自体はラインで拾っているはずなので、その音をミックスする段階で、ライブで聴いた音の印象とは異なる結果になったのだろうけど、これが、本来今井本人が狙っているバランスなのか?とか、考える。

そういう事を考えるのを取っ払って、単に鳴っている音を聴いていると普通に今井のギターを聴いてしまうのだけど、「Blood」とか「ll n'y a pas d'amour hellereux」はノイズが強烈で、今井のギターを見失うのだけど、それを探し出すと渾然一体としていて、音そのものより音楽全体のテンションをコントロールしようとしているのが垣間見える。



個人的には、このCDのジャケはカッコ悪いと思う。









今井和雄トリオ 『Blood』