Talon: Koto Power Trio

まあまあ客は入っていた印象。オレは19:15ぐらいに着いてそれなりに人がいるなと確認。クラシックスではついこの間酒井さんのライブを見たけれど、その時はほぼ定刻の19:30に演奏開始だったのに対して、今夜は20分遅れというのは少々頂けない気分。演奏開始の予定が19:30設定の時は、クラシックスに限らずSDLXなんかも平気で20〜30分程度遅れたりする。この辺の感覚はあの業界の慣習なのだと思うけど、個人的にはいつまで経ってもそれには慣れない。



1stは3曲の演奏。最初の演奏がフリージャズの印象で、その次がフリーインプロ気味。3曲目は覚えていない・・・。フリーと書いたけれど、もしかしたら書かれたものだったかも。1stはあまり演奏を見ずに聴く作業に集中。なので3人が譜面を見ていたのかどうか、わからない。まあでも、書いてあろうが無かろうが、あんまり関係ないけど。

2ndの最初は、八木さんが『殺しの烙印』という映画を見て、そのテーマ曲を演奏したくなったらしく、それの八木さんアレンジ・バージョン。八木さんの歌声で演奏が始まり、途中坂田さんも歌というかセリフなヴォーカルを披露。続いて、恐らくこの日一番の拍手喝采になった演奏。その次の演奏もちょっと記憶に無くて、最後はクロージングに相応しい内容だったと思う。そしてアンコール。



八木さんは1stがほぼ20弦箏で、2ndは17弦箏を扱った。という事からもわかるように、2ndは幾分、バランスに気を使った内容だったと思う。楽器編成的に、2ndはベースを担当したという事。17弦箏のベースというのは、チェロがベースを担当した時に近い聴感がある。グルーヴィーでありながらも、ベース・ギターやコントラバスの様な音の余裕みたいなものは無くて、ハイヒールがカツカツ鳴らす様にベースになる事もある。ジャズ的ではなく、テクノ的に思えたりして、これは楽器の個性だよな、と、確認。その音でグルーヴするのだから、必然で個性的に演奏は出来上がる。

1stの方、特に最初の演奏は、本田が音を上げると音の鳴っている雰囲気は掴めても、細部を聴く事が出来なくて、もう少し音量が欲しい気分だった。アグレッシヴ度は相変わらずで、切り裂くように一音(か二音)の繰り返しで割り込んできた時には、そのタイミングも含めて鮮烈。



坂田さんはいつもの如く、年中ライブしている人らしく、主役を奪ったり消えてみたりしながら、オレもいつもの様に、アルトを勝手にAylerだと思い、クラリネットも勝手にDolphyと解釈し、ニヤつく。多言要らず。



で、本田。一言で言うと、ジャズ・ドラマー。オレの好きな芳垣とか外山とか、ジャズはやってもその場以外ではジャズ・ドラマーという表現は似合わない。PNLもあまり似合わない。だけど本田はそれが似合う。古からのジャズの強い音を受け継いでいる印象。ジャジーとは違う、ジャズ。2ndの2曲目が一番盛り上がったのは、本田の圧倒するドラミングがあったからで、個人的にはここでのバスドラに持っていかれた。外しの美学みたいなものを全く持ち合わせていないのでトリッキーな部分が少なく、1stなんかは良くも悪くも消して聴く事も出来たりしたのだけど、2ndのその演奏のバスドラはなかなか消えない。バスドラは、大体が拍の印象を強める効果になるけれど、本田のバスドラはフレーズしていて、それを繰り返す。プログラミングなら軽く作れるそれが、目の前で叩き込まれている。これは今まで聴いた事ないなあと、得した気分。

オレが思うところ、クラシックスではシンバルとか金物とかミュートとか、そういうものをうまく扱えるタイプのドラムが映える。本田はどうか?というと、そういう部分では無難という感じで、オレが毎度ここで芳垣のそれに聴き惚れるようなものとは違う。そういう意味では、器用という雰囲気は無いのだけど、だからあのバスドラかも知れないと思う。またの機会待ち。