Rockers (完全版)

Lou Reed's Berlin (邦題 ルー・リード / ベルリン)』の開演前のトレーラーで、「これも見たい」と思わせた『Rockers (完全版)』。東京ロッカーズのドキュメンタリーらしく、間違っているかもしれないけれど、古い映画の再上映。当時のFrictionの映像が含まれている。たったそれだけの理由で見たいと思った。

それから何日も経って今日、ふとこの映画の事を思い出しネットで検索、今日が最終日と知り、足を向ける事を即決。だけど今日はこれフライング販売を狙っていたので、とりあえずレコファンに寄って難なく手にして、シネセゾンに向かった。ここもイチイチ席の指定があり、若干ウザい。だけど、こういうところとしてはビールが¥350(コロナとハイネケン)という良心的な価格設定は高い評価。

Friction以外の東京ロッカーズは、『東京ロッカーズ』しか聴いてない。これを聴いて、Friction以外には興味を持てなかった。映画を見る事によってその考えが変わるかもしれないと思ったけれど、逆の結果。Frictionの凄さを今までより思った。

映画の冒頭、Lizardの演奏。いきなり音が薄い事にガッカリする。これはバンドがどうとかいう事ではなく、録音状態がよくないという事。これでは伝わるものも伝わらない。その後も音質は改善されるはずも無く、それでも一応何かしらの発見を探して画面を追う。それなりに収穫もあった。Mirrorsはなかなか演奏力が高くて、この映画の中ではFrictionに継ぐ音を聴かせる。他にもSpeedや自殺といったバンドも悪くない。Mr. KiteとPainはインスト陣はなかなかいいのだけど、どちらもヴォーカルがどうしようもなかった。何故かいた関西のSSは、演奏がどうのこうと言うより、全員坊主頭という見た目のインパクトが強い。

Frictionは終盤に向かう辺りで登場。この中途半端な位置は、恐らく当時、Frictionが注目されてはいても、象徴的なバンドとしてこの映画の監督は捉えきれていなかったのだと思う。Frictionは「Crazy Dream」を演奏。Reck、チコ・ヒゲ、ツネマツマサトシ。Frictionの歴史で最も人気のある面子。当然この面子のFrictionは録音されたものでしか知らなかったけれど、この「Crazy Dream」を聴いて、そういう評価を理解。他のバンドとは違う。同じように音は薄いのに、Frictionだけが音圧を持っている。決して上手いタイプではないReckのヴォーカルも、こうやって他のバンドと並べてみれば明らかに一番カッコいい。そしてツネマツの、激しくかき鳴らしながらも音がつぶれないカッティング。これほどだったという事にある種のショックもあった。そして見た目にも、他のバンドと比べて全然カッコいい。Reckもヒゲもそうだけど、特にツネマツのカッコよさは、なんとなくJames Deanを思わせる。

トリ(前)としてS-Ken。東京ロッカーズの名付け親。だけど、正直言って音楽としては特に感じるものは無い。最後に何故かThe Stranglersが登場。少々視点がぶれた映画だったと言わざるを得ない。



あえて順番を逆にしたのだけど、映画の前にLizardのモモヨによるミニ・ライブがあった。それがある事は知っていたけれど、本音では「モモヨって名前は知ってるけど興味ないし。出来ればツネマツとかならよかったな」と思った。まあでも仕方がないかと思ってアコギで弾語りのモモヨの歌を聴いていた。どこかで聴いた事のある感覚が出てくる。率直で飾りの無い、生のままの歌。大江慎也が頭に浮かぶ。選ぶ言葉、メロディー、ギターのカッティング、それぞれ大江との共通項が聴こえる。この歌は人を選ぶだろうけど、確実にオレは掴まれた。Lizardとしてライブの予定がある事がアナウンスされていたけれど、それよりもオレは、今夜の演奏の続きが聴きたい。