Bob Mould

今回も思い出語りが強いけどご勘弁を。



厄介な事をしてくれた布袋だけど、この人の歌で初めて聴いたときから今までずっと好きな曲がある。3rdアルバム『Guitarhythm III』のリード・シングル「Lonely★Wild」がそれ。この曲の歌詞はずっと離れない。一部ではなく全てが残る。あえて一部を切り取ると、「きっといつの日か孤独とも愛し合える 影さえ捨てた奴等にはわかるはずのない祈り / きっといつの日か自分を超えられると 涙が出るほど痛いパンク聴くたびに信じられる」という部分。恥ずかしいぐらいにナイーヴ。若かった頃だから感じる事の出来た言葉かと思っていたけれど、今でも相変わらず。

さらに抽出。「涙が出るほど痛いパンク」、これは各々違うだろう。オレにとってはJoe Strummerがそうだという事にしたいのだけど、Joeより、より「涙が出るほど痛いパンク」はBob Mould。Sugarの1st『Copper Blue』がリリースされたのは92年。この辺りから数年間は消したい事が多い。その時期に出会ったSugar。キッカケは深夜のTVドラマ『青春もの』(93年頃?)のエンディングで流れていた「If I Can't Change Your Mind」。センチメンタルで疾走感のあるこの曲が好きだった。金は無かったので冒険はしにくかったけれど、この1曲目当てで『Copper Blue』を手に入れる。今では考えられないぐらい繰り返し聴いた。その後ミニ・アルバムの『Beaster』と『File Under - Easy Listening』をリリースして、Sugarはあっさり活動を止めてしまう。『File Under - Easy Listening』がリリースされたのは94年。この頃やっとオレは、色々あった時期(逆に何も無かった時期とも言えるし、何も残らなかった時間だったとも言える)から片足を引きずり出す。

その間にMouldのSugar結成以前のバンドとしてHusker Duを知る。Sugarはなかなかの好セールスだったようで、それを受けて、そのHusker Duのアルバムも日本盤というか、輸入盤に帯と日本語の解説をくっつけたものがリリースされ、それを手にして、Sugarと同じようにHusker Duも聴いていた。正直言えばSugarはパンクとは言いにくい。だけどHusker Duの『New Day Rising』は、何も無かったと思っていた80年代のロックが、USアンダーグラウンドにはこんなにカッコいい音があったという事を示していた。そしてそれ以前の『Land Speed Record』や『Metal Circus』はノイズと疾走感のみを頼りに演奏していて、打ち返せないそのストレートは胸を打つ。

Sugarを解散した後のMouldはソロで活動を続けている。この間何枚かのCDがリリースされ、それをずっと手にしている。だけど正直言って、Husker Du〜Sugarの音のように繰り返し聴くには至っていない。加えてあまり日本盤がリリースされない状況もあり、Mouldの何かがリリースされたという事を知るのは偶然しかない。その偶然が最近。いつものようにレコファン。なんとなくBob Dylanのコーナーを見ている。CD棚の上においてあるDVDの方もなんとなく見てみる。そこにDylanではなくMouldのDVD『Circle of Friends: Live at the 9:30 Club』を発見。「何だこれ?」と思って手にとって見ると、昨年リリースされたものである事がわかる。だけどミュージシャンの了承無く勝手にリリースされているようなイマイチな代物の可能性もあると思って、焦らずに部屋に戻ってからネットで調べる。ちゃんとしたものである事がわかる。ネットでの値段も見てレコファンで購入する事に決め、岡村靖幸のCDと一緒に買ってきた。2005年のライブ。編成はシンプルで、Mould以外にはベースとドラムとキーボード。ライブ時の最新作である『Body of Soul』からの楽曲を中心に、SugarやHusker Du時代の曲も演奏されている。というか冒頭の3曲は『Copper Blue』の曲だし、全23曲中7曲が『Copper Blue』の曲で、まるで『Copper Blue』時のライブの様でもある。「If I Can't Change Your Mind」もしっかり収録されている(『Beaster』や『File Under - Easy Listening』からの曲は無い)。Husker Duの曲も効果的に配置されているし、あまり耳に馴染んでいないMouldのソロの曲も、こうやって改めて聴く機会が出来てよかったし、「Beating Heart The Prize'」のギターソロにはツボ押されまくり。



これを見てSugar以降のMouldのソロ作をガーッと聴いている。耳に残っていた曲、全く聴き覚えの無い曲など、色々。リリースされたばかりの新作『District Line』も手元にある(これのインプレはそのうち)。レーベルがエピタフになったという事で日本盤が出るかもしれないという期待もあるけれど、このDVDを見た後にそれを待つ余裕は無かった。









Bob Mould 『Circle of Friends: Live at the 9:30 Club』