Exotic Inquiry

今日もスーパーデラックスに行ってきました。結局Han Benninkの3days制覇しました。というか、3daysがあると知って、毎日面子が異なって、毎日興味深い面子であったのだから、初めから3日とも行くつもりで予約していた。当日と予約では¥500違う。¥200足せば東京エール一杯分の金額になる。だから予約するの当たり前。しかも3日とも実は結構若い予約番号だったけど、その権利は一度も行使せず。単に¥500のために予約していた。その分多めに飲んでもOKな気分になる。そのせいでカウンターのお姉ちゃんに「またお前か・・・。東京エールの生だろ?、はいはい」というクールな目で見られても気にしない(自意識過剰とはこういう事)。若干Mっ気が芽生えつつあるのか?

今夜の注目は山本精一。この人のライブは結構あるし、例えばレディージェーンなんかでのライブに行けばいいのだけど、小さいハコではいつも満員になるような感じなので躊躇する。大きめのハコでは単独にはならないので躊躇。今夜もそれなりの混み具合になる事は予想できたけれど、それなりの混み具合というのはオレの最も好きな条件だったりする。だから今夜は躊躇無し。

山本が加わるのは1stセット。だけど今夜もまずはHanのソロ演奏。これはこの2日間から予想できていた。そして今夜は一応そのパフォーマンスを目でも確認。見せるという事を意識した演奏で、正直言えば、その音だけで引き付けるような内容だったとは言いにくい。だから、見て初めて面白い演奏。だけど、これが視界に入らない人もいるわけで、そういう人には単なるドラムがなっている演奏だったと思う。オレは今夜は一通り見たけれど、まあ、楽しいパフォーマンスだったと思うけど、無くても別に問題は無い。

そして本編。Hanと山本に、ピアノとエレクトロニクスな道具を使う坪口昌恭のトリオ。が、ここでまさかな事。山本が手にしているのはギターではなくベース。「マジかよ」と思ったけどこればかりはどうしようもない。ある意味ピアノ・トリオ。というか、フォーマットとしては完全にピアノ・トリオ。ギターが聴きたいのですが・・・。演奏が始まる。山本はグイグイとベースを弾く。なんとなく想像は出来ていたけれど、やはりベースも聴かせるものを持っている。だけど、音が団子。これは意図的なのか、オレの聴いていた場所の問題なのかわからないけれど、もう少し音にエッジが欲しかった。これをベースに坪口のピアノの音が色をつけるけれど、ちょっとベースの音に消され気味。それを意識してか、エレクトリックな音が時々突き上がってくるけれど、焼け石に水。あまり長くない演奏が終わり、ここで山本がギターに持ち変える。やったと思う。アグレッシヴな音が出てくる。嬉しくなる。だけど、少々抑え気味。ベースを使った演奏でもそうだったけれど、Hanがメインという事を意識してか、ジャジーな感触の音も出てくる。もちろん全体としてはフリーキー。じゃあフリ−ジャズだったかといえば、そいう感じでもない。これは少し不思議な感触。どっちつかずという皮肉も言えないわけではないけれど、つまらないわけでもない。なんとなく、掴めないままで終わった1st。

2nd。Hanと灰野敬二のデュオ。この3日間のセットで、最も期待度の低いセットがこれだった。灰野がギターを使わない事はスケジュールのところに書いてあったので知っていた(よく見ると山本もベースと書いてある・・・)。だから期待しなかった。灰野のヴォーカリゼーションやパーカッションの扱いに、オレはあまり面白さを感じた事はない。だからギターならばと思っていた。そういうふて腐れた態度で2ndの演奏に接した。結論から書く。このセットがこの3日間で最も引き込まれるセットだった。ここまでレジェンドとしての存在感しか感じていなかったHanの演奏も申し分なかった。金物をその大きなアクションで扱う灰野と、ドラムらしい音よりもパーカッシヴな展開を使うHanの音の重なりが調和していた。有機的に絡み合うという言葉が、これほどふさわしい展開は無かった。感服。感動。完敗。乾杯。感慨深い。

Eric DolphyDerek Baileyを知っているHan。それだけでオレには特別すぎる存在。だから、この人が特別な音を出さなくても、それなりの演奏さえしてくれればオレには文句が無い。阿部薫を知っている灰野。この人にも、それだけでも敬意を持てる。だけど、この2人のセットを聴きながら、灰野もBaileyを知る男である事を思い出す。そしてなんとなく今夜の2ndが、美しい演奏であった事の理由が見つかったような気がした。

アンコールは揃い踏みでの演奏。山本は最初ギターを使っていたけれど、途中から参加の灰野がギターを持ってからはベースに衣替え。山本は2ndの時もステージ脇でじっと演奏を聴いていた。こういう姿勢のミュージシャンというのは、実は案外少ない。ちょろっと聴いて楽屋に引っ込む人はよくいるのだけど、すぐ横でセットを全部聴いているミュージシャンは初めて見たような気がする。その事実だけでも、この人のミュージシャンとしてのスタンスは文句無し。




実は昨日の昼頃、非常階段のJOJO広重のブログを見て、小沢靖さんが亡くなられた事を知った。昨年、Marginal Consortでその音と姿を初めて確認した小沢さん。小沢さんは不失者のベースでもある。オレは灰野というミュージシャンのCDはそれなりに持っている。当然不失者もある。だけど、灰野の独特な雰囲気は、オレを彼のライブに足を向けさせる事を妨げるところがあり、灰野がメインのライブにはいまだに行った事がない。だから当然、不失者も見ていない。だけど、Marginal Consortで小沢さんの姿を見て、そのうち不失者のライブに行く事になるはずだと思った。それは叶わなくなった。Marginal Consortの首謀者である今井和雄の音を昨夜聴いて、今夜灰野の音を聴いて、その2人の音に惹きつけられて。それで思う事がないといったら嘘になる。



小沢靖さんのご冥福をお祈り申し上げます。