AVVA

Erstwhileの新作のKeith Roweの『The Room』とeRikm / Debi13の『Chaos Club』をオーダーしようと思い、どこが一番安いかを吟味後、結局Ftarri CD ショップと判断。オーダーを行って、そのうち届くという状態になった後、ふと、手持ちのErstwhileのCDを見る。実はカタログ全て揃っている。レーベルを丸ごと聴いているのはここだけだったりする。このレーベルの音を抑える事によって、弱音な音を多少フォローしている気になってしまっている。

Erstwhileに興味を持ったのは、Keith Rowe / Axel Dorner / Franz Hautzingerの『A View from the Window』に興味を持ったからだった。Baileyと並ぶ、フリー・インプロの巨匠Keith Rowe、ヨーロッパの即興シーンで名前が知れ渡っているAxel Dorner、Baileyとの共演もあるFranz Hautzingerと、なかなかの面子に、ちょっと好みなジャケット。だけどなぜかタワレコで見つからず、Erstwhileの日本語のページのメアドにメールを送って購入可能なところを聞く。その返事にはやはりタワレコとかユニオンという事が書いてあったのだけど、直接レーベルから買っていただいたほうが・・・という言葉、しかも、5枚以上買えば1枚あたり$13(アメリカからの送料込み)という価格設定に負け、Erstwhileのカタログから面白そうな4枚を選び、結局5枚オーダー。当時のレートで¥6,890を振り込み、一週間ほどでCDが到着。その後Erstwhileのバーゲンやら何やらを活用し、気が付くと1年ほどで全てのタイトルが揃っていて、その後リリースされるものはレーベルからではなく国内のネット・ショップを使って購入し続けている。それを振り返ってみると、最初のオーダーが2004年の10月末で、最後のErstwhileへの注文が2005年の8月。1年かからずに全部揃えてしまったので、その結果、各々の音を聴くというよりも、完全にErstwhileというレーベルとして聴いてしまっていた。本当はそういう聴き方に良い悪いは無いと言いたいけれど、実際はよくない事だったと思っている。それはレーベルの音として認識してしまった為に、Erstwhileでの音しか聴いていないミュージシャンの音の個性を掴み損ねている事に気付いた。そしてそれは、わずか1年余りの間に大量にErstwhileの音を聴いてしまったことも関係している。そこに反省点があり、だからなんとなくわかっていたつもりの中村としまるの音も、実は全然わかっていなかった。

そこに気が付いたのは、AVVAというユニット名でErstwhileから中村としまるがリリースしたDVDを見てから。このDVD、吉田アミ / Christof Kurzmannの『aso』と一緒に買ったのだけど、映像メディアがあまり好きじゃないという事、そしてこの作品の映像はアート系である事が間違いないという事があって、包装を剥がしてもいなかった。だけどさすがに新譜が届く前に一応見てみようという気持ちになり、半年ほどほったらかしていた『Gdansk Queen』を再生してみた。

中村のノー・インプット・ミキシングボードの放つ音は、ある意味弱音な音響派の代名詞みたいな部分がある。だけどこれまでにオレが聴いた事のある中村の音はどれもがコラボ作品であり、結局はそのなかで中村の音を注意深く追うというようなことをしていなかった。だからこの作品を見る事は、初めて中村としまるというミュージシャンの音を聴いているような気分だった。NIMBの音しか無い状態は、従来の音楽的な音色という考え方をすると単色かもしれない。だけど、弱音、ほぼ無音のようなものから何かを聴き取ろうとした後なら、この音でも十分は多弁に語る。





AVVA 『Gdansk Queen