Bob Dylan

No Direction Home』は昨年BSで放送され、今年の初頭に小規模ながらもロードショーで上映されていた。BSの方は見逃していたうえに、3時間半という長さを映画館で見る気にはなれなかったので、今回発売されたDVDは待ちに待った物。

この『No Direction Home』にはDylanのデビュー時からバイク事故を切っ掛けにした隠居生活までのDylanという騒動をドキュメンタリーで追ったもので、Dylanを語る上で欠かせないシーン(『Live 1966』に収められていたあの「ユダ!!」と罵声をあびせられるシーンも見る事が出来る)等も含まれている。それらに当時の関係者やDylan本人の現在の証言を交え、Scorseseが仕上げた。

ライブDVDという訳ではないので、Dylanをあまり知らない、或は興味が無い人には向かない代物だと思う。だけどその逆の人、特にリアルタイムで当時のDylanを知らないものにとってはこれほど興味深いものは無い。メディアやインタビュアーに対する失望の色が年々濃くなる姿や皮肉まじりの受け答えは毒々しく、だけどその言葉廻しはさすがと思わせる。フォーク(アコースティック)からロック(エレクトリック)への転身という事がその信望者達にとって許せない事だったという事は知っていたけれど、コンサートでのブーイングは見ていて飽きれる。「サインをしなければ嫌いになる」等と脅迫してくるファン等には言葉を失う。それを気丈に乗り切った当時のDylanにとって、最も信じられるのは、後のThe Bandの面々だったんだなという事も確認出来る。

そういったフィルムの中でオレが最も好きなのは、あるコンサートでの1シーンで、ロックを演奏した後、「次はフォークをやります」、「喜んでもらえると思った」といいながらロックを演奏するところ。この太々しさがなければ、Dylanはあの狂った騒動を乗り越えられなかったかもしれない。









Bob Dylan 『No Direction Home』(DVD)









Bob Dylan 『No Direction Home』(CD)




実は今日からこのBlogも2年目に突入。だけど、だからどうしたって事は無い。そんな事よりやはり昨夜のブラジル対フランス。オレは今のブラジルが勝ち進む事を望んでいなかったから、アンリが恐らく初めてのジダンのアシストでブラジルを撃破した時は、思わず声が出た。その後、いくらブラジルが猛攻を仕掛けてもフランスのディフェンスを崩す事は不可能だと思っていたので、あの1点で試合は決まったと思った。若く、素晴らしい才能があるにも関わらず、ネームバリューと、リスクを減らして勝つ事を重視したブラジルが負けるのは、サッカーにとっては健全な事だと思う。それに、それまでの戦いがあくまでも格下のチームだけでしかなかったブラジルにとって、歴史も伝統もプライドも持っていたフランスとの戦いに対する準備は出来ていなかったと思う。4年後のチームが今回の事を踏まえたチームになるのかどうか、それがブラジルの課題だろう。そして、欧州での大会では、南米勢は優勝できないと言うジンクスは今回も破られなかった。

出揃ったベスト4。個人的に「優勝するべきチーム」だと思っていたアルゼンチンが試合の詰めを誤り、PK戦で次の試合に出る権利を無くしてしまった事はもったいないと思うけど、結果は結果で受け止めなければいけない。縦の攻撃力と、強い体を持ったドイツと、結局伝統のカテナチオに戻し苦しみながらも勝ち進んできたイタリアの戦いは、イタリアの驚異的なディフェンス能力がドイツをいかに封じ込める事が出来るかで、勝負が決まるはず。

勢いの付いてきた感のあるフランスは、しぶとく勝ち残ってきたポルトガルとの対戦。確かにブラジル戦のジダンは良かったと思うけれど、そろそろ疲労が限界に近いところにきているんじゃないだろうか? ポルトガルジダンと同じくフィーゴの疲れが気になるけれど、ここでデコが戻ってくる事はそれを補ってあまりある事なのは間違いないので、ラテン系対決の勝負の分かれ目は、フランスがデコを封じる事が出来るかどうか、そこにかかっているような気がする。