聴き倒し

宣言してみたとおりに、David S. Wareを聴き倒した・・・。追悼とはいえ、こんなアホなことをするってのはどうか?って思うかも知らんが、まあ、オレ自身も思ったけど、言ったはいいが途中でイヤにならんか?とも思ったけど、意外とすんなり、嵌り続け多々。
手持ちでの最初のアルバム、『Passage to Music』から始めたのだけど、そこから『Wisdom of Uncertainty』に至って、そこがなんか、1つの完成系だと思った。アグレッシヴとスピリチュアル。その両方がDSWの持ち味だと思ったのだけど、『Wisdom of Uncertainty』で結実していると思う。振り幅で言えば、『Godspelized』と『Dao』で聴き取れるのだけど、それが上手く同居したのが『Wisdom of Uncertainty』だと思う。特に、その中に収録されている「Utopic」だと思う。
そこからの2作は、Branford Marsalisによってメジャーからのリリース。DSWがメジャーからリリースって、当時のBranfordの影響力って凄いんだなって思うのだけど、まあ、その2作は、それまでDSWを聴いてた立場では、ちょっと、繰り返すに至らなくて、今回聴きなおしても、やっぱ、それまでのDSWの作品の後にこれを聴くのは若干不利。とは言っても、それはそれまでを知っているからの考えで、そこでDSWを初めて聴けば十分インパクトのある作品だったんじゃないかと、思う。メジャーでの2作の後にリリースされたのは『Live in the Netherland』で、これはDSWの独奏ライブ音源。が、これはメジャー2作の前に録音されたもの。まあそうだとしても、当時のオレは、ホント、この作品に狂喜した。独奏の作品ってのがとにかく好き。
メジャーを抜けた後の最初の録音作品が『Corridors and Parallels』で、ここで新機軸として、Matthew Shippがシンセでアグレッシヴな音を持ち込む。これを聴いて、『Wisdom of Uncertainty』はやっぱり1つの到達点だと思った。今回は探せなかったので聴いていないけど、この後Rollinsをカバーした『Freedom Suite』があって、Thirsty Ear のBlue Seriesからwith Stringsというスタイルの『Threads』がリリースされる。当時、この作品を特に繰り返さなかったのだけど、今回久々に聴いて、『Godspelized』とは違った美しい作品だったんだな、と、当時の自分の耳は何してたんだ?って、思った。そして3枚組のライブ録音『Live in the World』は、そのボリュームに圧倒されるのだけど、ここまでのDSWを1つのパッケージに纏めようとしたものにも思えて、そう思えば98年の録音と03の録音という時期の違うものを1つのパッケージにしたのかと、勝手に納得。
この後、99に録音されてお蔵していた『Balladware』がリリースされる。バラッド集なのだけど、なんてったってDSWのバラッド集なので、ジャジーな甘いやつってのとは違う。
そしてMatthew Shippを加えた最後の形の作品、ライブ録音の『Renunciation』。これも1つの区切り、だよな。ここでShippが離れるという事。至高のカルテットがここで成立しなくなる。そして『Shakti』って流れの前に、『Live in Vilnius』というアナログのみでのリリース作がある。未聴なのだけど、Shippが居る作品としては、そっちが最後って事になる。で、Joe Morrisを加えた『Shakti』。Morrisはシングル・ノートを多用するギタリスト。わずかにコードでのバッキングみたいなのもあるけれど、やはり基本は単音。なのでここでのカルテットは、2管編成の様な音。というか、『Shakti』は、ここまでとこの後のDSWの作品で最も不穏。Morrisのギターは、本来のスピードを多少抑えているのだけど、それが不穏を思わせるのかも知らん。演奏も意外にキッチリソロ回しみたいな感じなのだけど、それがまたなんか不穏なんだよなあ。DSWとMorrisがテーマを一緒に奏でるってのが大体なのだけど、「Reflection」では、Morrisはソロの時しか音を発していない。ホントなんか、この作品は、音的にはそれまでよりも地味にすら聴こえるのだけど、ちゃんと聴くと特異に思う。
この後結局MorrisはDSWのグループから外れる。録音物としては、『Saturnian』と『Organica』というDSWの独奏ライブ音源とか、久々にトリオ編成で渋くフリージャズかます『Onecept』。そして、DSWにとって長年のパートナーのWilliam Parkerをベースにすえたまま、ピアノにCooper-Moore、ドラムにMuhammad Aliという新しい面子を揃えて『Planetary Unknown』、今年リリースされた2011ライブ録音の『Planetary Unknown』。ここでは、衰えないというか、アグレッシヴさは増しているんじゃないか?ってぐらいのバンドになっていて、うーん、もういい加減、Tokyo JazzでもいいからDSWを日本につれてきてくれ!って、思った。
聴き倒し後、だけど、せっかくなのでボートラ的に『The Trio Plays Ware』を再生中。これは04にリリースされた、当時のDSWカルテットからDSWをマイナスしたMatthew Shipp & William Parker & Guillermo E. Brownのトリオで録音された作品。こういうやりかたのカバー作品ってあまり記憶がない。DSWという圧倒的なサックスの音がない状態でその曲を聴くと、演奏力だけでDSWに魅了されてたわけじゃないんだなーって。