適度な運動には、セックス

酒井俊のライブは、一時期何度も足を運んでしまったので、ここ2年ほどは抑え気味になってしまっていた。けど、石橋英子と『おしりたち』というユニットというかライブというか、そういうのをやっているっての興味を掻き立てていて、で、今夜のクラシックス
(ふたりともいろいろ)という担当。まあ、そうは言っても、基本酒井さんが歌で石橋さんがピアノ。けど初っ端、石橋さんがフリーなピアノで、酒井さんは紙状の何かをガサガサ、と。まるでフリーインプロな展開に、ニヤついてしまう。酒井さんが歌以外のやり方をライブに持ち込むっての、初めて見た。そんな状態に歌声をのせ、演奏が続くのが、まあ、この2人でやるとこんな事になってたか、と。勿論、石橋さんはちゃんと歌の為の演奏もするのだけど、酒井さんは歌詞にこだわったヴォーカルに徹するわけも無く、MCの様な内容まで演奏に混ぜてくる。更に石橋さんはフルートや、サンプラーらしきものも扱い、酒井さんは拡声機でのアプローチなんかも持ち込む。こういう色々が、終盤になるにつれてやっぱり歌と伴奏の関係に出来上がっていくのが、色んな過程を見ているようで、面白かった。
で。『おしりたち』は前からやっているのだけど、それでも今回が初見になったのは、今回は絶対に行くと、させる理由があって、それが2nd。今夜はカップリングなライブで、2ndは早川義夫と熊坂るつ子のデュオ。2年半ほど前、ピットインの昼の部で梅津和時のこまっちゃクレズマと早川さんのライブがあって、それが初めて、早川さんのライブを見る機会だったのだけど、CDで聴いて思っていた以上に感情的な歌声だった。それから元Fishmansの面子とのライブと、昨年の年末の新宿JAMでのライブ、その3回しかライブは聴いてなかった。それは、オレがライブを見る予定を立てるのが、ピットイン、スーデラ、そしてクラシックスのスケジュールを確認するのが最優先になってしまっているので、そこに引っかからない早川さんのライブとは、縁が遠くなってしまっている。けど、今夜クラシックスって、しかもこのカップリングってのが、なんか、オレには出来すぎに思えた。
CDで聴く早川さんの歌も大好きだけど、やっぱ、ライブでの大きな歌が、カッコいい。多分前にも書いたかも知らんけど、型のそれとは違うけど、ブルースってのを思う。歌がとにかく強い。一見不器用に見えるその歌は、多分そうじゃない。と、思う。いやまあ、もしそうならそれでも、別にかまわない。歌声の存在感ってのは、多分そういうのとはカンケーが無い。それを早川さんの歌に思う。フローリングなクラシックスの床を時々踏み鳴らして演奏するあの姿に、ニヤニヤしてしまう。感情っての、物凄い大事だろ。そしてそれを、アコーディオンの熊坂るつ子の演奏にも思う。見た目、マジで中学生ぐらいにしか見えんのだけど、まるで姪っ子みたいにしか見えないその子の演奏は、んー、こんなに感情移入している演奏者は、今年も結局100は越えそうな勢いでライブを見ているオレの記憶でも、そうは、いない。入り込んだときのJim O'Rourkeの如き姿。だった。けどその音はアヴァンなのとは違って、凛々しく憂いのある音色で、この色んなギャップが、この子の今後、面白そうだと思ってしまう。まあでも、これからもスカートの下はレギンスなり何なり履いて、下さい。足の上げ方が危険すぎるので。
アンコールは早川さんと酒井さんのデュオ。100年ぶりに出会ったらしい2人の、それぞれの持ち味が1曲だけってのはちょっと物足りない気分になるのは、それだけのを聴いたって事。です。なので再アンコールの拍手がしつこかった。のです。
で、物販。まあ、買うものは無いよなあってライブだと思っていたのだけど、早川さんの本が持ち込まれていて、あー、そうか、と。そういや、早川さんの本って、読んでないなあ、と。で、勿論買う。3種類の本が置かれている。けど、どれを買えばいいのかなんて、予備知識の無い状態で選ぶなんて無理。じゃあどうするか?って言えば、まあこれは、3冊とも買えばいいだけの話。フトコロは勿論常にさびしいけど、一応本を3冊買うぐらいのお金は財布に入っている。ので、買え、と。したら、早川さんがサインを入れてくれる。それも3冊とも、だ。しかもこちらの名前も書いてくれる。自分でも笑えるぐらい悪筆なオレの字を見て書いてもらうので恐縮なのだけど、やっぱ嬉しい。名前入りになってしまったので、これは古本屋には持ち込めない。のです。
で、ログのタイトルは、別にオレの思っていることじゃなくて、今日のライブのMCの抜粋。これが酒井さんなのか早川さんなのか、は、書かん。ご想像にお任せ。