Fernando Kabusacki TOKYO Session at Shimokitazawa 440

もう、殆ど、目にする事が無くなったアルゼンチン音響派という言い方。それが流行りな頃には乗り遅れてしまって、若干後追い気味に少しずつ聴いているのだけど、ライブが見れて無い!!ってのは、やっぱり取り返しがつかない。あー、って感じだったけど、昨年だったかのJuana Molinaの来日は、「なんでこんなとこで? スノッビーな音楽だっけか?」って思ってまあいいや、と。したらやっと、Fernando Kabusackiの再来日。個人的に、アルゼンチン音響派の作品的にはMono Fontanaの作品が印象深いけれど、不思議とアルゼンチン音響派という言い方の代表格はKabusackiだと思っている。どこかで擦り込まれたと思うのだけど、それがどこかは覚えていない。
今回のKabusackiのライブは何回かあるけれど、個人的にはとりあえず今夜だけの予定。下北の440。初めていくとこ。この下には何度も行ってるけれど・・・。
1stの最初の演奏は、Kabusackiと石橋英子のデュオで始まる。なんとなくそうだろうと思っていたKabusackiのギターは、思ったとおりだった。思っていたのは、繊細という事。音も小さめだけど、弱音というほどではない。けど、石橋さんのピアノの音が大きすぎるとすら思ったほど、Kabusackiの音は繊細。エレクトリックなギターで音楽は抽象的にもとれるのに、Kabusackiのギターはあくまでもエレキな響きなのに柔らかい。その音と、ジャズベースではない石橋さんのピアノの響きが徐々に同じ方向に鳴り出したところで勝井祐二が加わる。勝井はヴァイオリンをアコースティックな音色で絡める。何を弾くか?っていうより、音色の絡み合いの演奏だった。
続いてKabusackiと大野由美子芳垣安洋。最初の演奏の様な繊細な演奏かと思いきや、ここではグルーヴを伴う。とは言っても、芳垣がガンガンとビートを叩き込むのではなく、芳垣ならではの多彩で彩り、ここに大野さんの(ミニ)ムーグが一見素朴でありながら実は結構凶暴な音色の単音。Kabusackiも明らかに熱の上がった演奏なのだけど、けど、それでも、ピックのアタックされる音が無いかのような音色で、これは、何気に聴こえるこのギターは、もの凄いスキルだー!っと、思った。そして気が付くと大野さんはベースに持ち替え、ギタートリオ状態。けど、アヴァンのトリオとは違うし、ここまで全くジャズな瞬間は無い。Kabusackiの弾くギターの独特が、この辺でなんとなくわかった気がした。
2ndは全員揃い踏み。のっけ、Rovo化する。勝井は代名詞的なサイケで上がるエレなヴァイオリンをかます。大野さんのベースはゴリゴリとしているし、芳垣も煽り気味。しっかし、KabusackiとRovoするなんて、なんかいいのか?ってのと、Rovoの2人が揃ってんだからやっぱこうじゃなければってのと、思ったりした。けどこれで押し通すわけもなく、この後は消えかけていた石橋さんのピアノの音も存在感を示せる展開。ここからが凄かった。この後、決して序盤の様な上げる状態には戻らなかった。全体でいくつも変化しながら、即興が進行する。即興の大体は終盤にアゲアゲを持ってくるのだけど、そういう型とは違う演奏。ある意味、即興聴きは裏切られた展開なのだけど、地球の裏側までやってきたKabusackiの持ち味はオレの知っている型とは違うものだったのだと思う。
アンコールは2ndの逆。Kabusackiのソロから始まって終盤にアゲアゲな展開。けど違うのは、ここでは大野さんはベースではなくムーグの攻撃性でグルーヴとは違う音を入れ込んできていて、上げてるしノリもあるのに不安定な雰囲気もあって、なんかヤバイものを聴いてしまった気がした。
終了後物販を覗く。KabusackiのCDは2枚しか持って無いので、持って無いものが確実にあるはずと思って見たら、3種類CDがあって、それがどれも持ってないもので、それを選べばいい?って考えたけど、あんまり考えると邪魔なので3枚お買い上げありがとうございます、オレ。アホか・・・。
まあいい。とにかく、Kabusackiのギターは、ちょっと、なかなか、聴けそうで聴けないタイプ。どこがわかりやすく突出しているっていう言い方は出来ないけれど、結局何をやってもKabusackiという人の音になる。ホント、ちょっとわかりにくいかも知れんけど、これだけはホント、マジで凄いギターだと思う。ギターとか即興好きがこの機会を逃す手、は、無い。