H_K_K_E

スーパーデラックスは音楽のみのハコじゃないので、そのスケジュールをチェックしていると、時々意味のわからないタイトルのものがあって、それがなんなのかわからんのでとりあえず詳細を見る。今夜のそれもチェックして、するとアメリカからEyal Maoz Trioというバンドが来るという。全く知らんけど、Tzadikからリリースしているという事なので、amazonにCDを発注。けど、このCD次第でライブを見るかどうかを決める気は無くて、もうこの時点で行く気になっていた。それはこのライブが対バンで、羽野昌二 x 工藤丈輝と、工藤冬里のソロであるという事が理由。羽野と工藤のコンビは、ピットインで見て、羽野のドラムはいうまでもなく、あまり音楽以外のパフォーマンスに興味の無いオレでも楽しんでしまった工藤の舞踏を見ていたからで、ぶっちゃけ、この組合せだけでのライブでも足を向けたはず。そこに工藤冬里のセットも加わる。この工藤冬里はほぼ名前しか知ら無かったのだけど、ググって見たら手持ちのNoise『天皇』の片割れである事を知り、今やっている音楽はそれとは異なるだろうけど、一応名前は知っていたし手持ちのCDもあるし、しかもソロでのパフォーマンスってのも面白そうだし、なんか贅沢な気分だった。が、この震災でSDLXは興行できない状態が続き、やきもきしていたら無事復活。が、今度はEyal Maoz Trioが来日中止という事で、まあ残念だけど、まあ、いいや。って思った。
演奏を待っていると、なんか真ん中の客席ら辺にいた連中がダラダラと楽器に向かう。羽野とは違うし、どうも工藤冬里という人よりも若い感じ。ん?、もしかしてEyal Maoz Trioのトラか?って思って見ていたら、やはりなんかゆるっと演奏が始まる。どうも学生時代の音楽サークルの仲間が社会人になってもバンドを組んでいるという雰囲気。すると、2人居るラッパの1人がケータイをかける。なんかのパフォーマンスか?って思っていたら、その後ケータイで呼び出されたテイのギターが加わる。他はドラムとベースとヴァイオリン。ミニマルなフレーズを、その終わりで崩しを入れるという演奏。高度では無いけれど、簡単でも無さそうで、なんとなくTalking Heads的なファンクでもあって、でもダラダラの印象が抜けず、正直微妙に思った。けど、まあトラだし、仕方ないなって思った。その曲の演奏が終わり、これでセットも終わりだろうと思っていたら、もう1曲演奏。しかもそこでギターの人が歌うというか、ポエトリーリーディング。んー、なんか、これ、聴かなければいけないのか?って思って、んー、ってなってしまった。しかもその言葉の中には、今の時期には聴きたくない言葉もあり、これはあえてこういう言葉を使う事で、それがアートだと思ってるんだろうか?って思ってダルい気分になりながら演奏が終わるのを待った。曲自体はベースが持ち替えたギターのカッティングとか気持ちよくてよかったんだけどなあ。
2ndは羽野昌二 x 工藤丈輝。セットの前に羽野がこの震災で犠牲になった人への黙想を呼びかけ、シーンとなってそれをする。そして思う事を話す。それは震災のことであり、そして意外にも、1stのバンドへの苦言も少しあった。少々オレの思った事とは違うけれど、でも、同じ内容でもあった。やはり1stのバンドは若いバンドで、少し誉めて少し苦言を呈することで、ハッパをかけたのだと思った。こういうの珍しいと思う。けど、なんかカッコよかった。こういう大人が必要だと思った。そしてこれはある意味、啖呵を切った事になる。この後の自分の演奏は、絶対に1stよりも面白いもの見せると言った事になる。
そしてその2nd、1時間、工藤丈輝の舞踏と羽野のドラムの音だけで釘付けにしてくれた。多分暗黒舞踏がベースの工藤丈輝の動きは、コミカルも交えているのにシリアス。手の動き1つだけでも、目を逸らす気になれない。それを只管演出する役目の羽野のドラムは、独特な地を這うドムドムした音。いや、演出ってのは違うかも知らん。ちゃんと対立もしている。なのでオレとしては目は工藤を追いつつも、体はリズムに合わせる。衝動の表現の仕方は色々だろうけど、熟練していながらオルタナなこのセットは、パフォーマンスするという事の凄みだったと思う。
で、3rd、と思っていたのだけど、なんかどうも終わりの雰囲気で、あれ?、もしかして工藤冬里も急遽キャンセル?って思って、まあ、別にいいけど、それならそれで入り口で一応告知しないとダメだろって思った。が、まあいいと思って、今夜は羽野さんのCD買って帰ろうと思ってたのだけど、どうも売り子を連れてきて無いようで、しかも羽野さん、ドラムの片づけをはじめ、んー、と思いながらなんとなく物販のCDを見ていたら、1stのバンドのところで売り子と客が話ていて、工藤さんのそろがどうのこうの言ってて、なんかよくわからんけど、そこに並んでいるCD(-R)、もしかして1stのバンドのじゃなくてライブしなかった工藤冬里のなのかって手にとって見ていたら、その会話の続きが聞こえて、そこで驚く。なんかどうも1stのバンドのギターと歌った人、あれが工藤冬里らしい。マジか?って思って思わず売り子に聞くとやはりそうだと言う。ソロって書いていたのにバンドだったし、でも確かに若いバンドに見えたけど、なんかそうでもなくも見えていたので、そういう事だったか、って、思ってしまった。なんかなあって思いながら並んだCD(-R)を見つつ、ここに並んでいるのは1stの様な音楽なのか?と訊ねてしまい、まあ、基本そうだと言われて、んー、と思ったのだけど、結局なんとなく1枚買ってしまった・・・。しかも結局羽野さんのCDは買えずじまい。
こういう、自分の好みに合わなかったという事を書くとまた嫌がらせを受ける可能性はあるのだけど、でも、まあ、書いてみた。でも、なんか、今夜のあれが、工藤冬里という人の音楽だという事に、それを知らんくせに、何か知らんけど腑に落ちなくて妙な気分。したら5月に同じくSDLXで、今度は七尾旅人とのスケジュールが入っていた。もう1回、ここで、工藤冬里の音楽を確認する。あ、CD(-R)も聴かねば。