断崖のオペラ

今夜が今年最後のライブ鑑賞。タイトルにあるように、オペラっすよ、オペラ。新宿JAMでオペラ。
出演は、シベールの日曜日渚ようこ早川義夫+熊坂るつこ+トビウオリアキ+佐久間正英。これは要するに、早川さんの歌が聴きたくて足を向けたライブ。時々早川さんのライブが見たくなってスケジュールをチェックしていたのだけど、なかなかタイミングが合わず、という事を繰り返していた。その結果年末。年1でもいいから見たいって昨年の『「マリアンヌ」から「I LOVE HONZI」まで』時に思って、が、ここまで見れていなかった。んー、と思っていて、が、今夜はそのチャンス。もちろんワンマンが1番いい条件だけど、お目当てもちで他の人の演奏を見る機会というのも悪くない。
1stは渚ようこ。勿論名前ぐらいは知っている。なんとなく、歌謡的な音楽という事も知っている。その程度の予備知識。従えるのはギター2本。アコギとエレキ。エレキの方は後に出るシベールの日曜日の人らしい。固い響きのエレキと、その音量にあわせたアコギの組み合わせは、決して聴きやすい音像じゃない。どちらかのギターをアコベにすれば、歌謡的な歌とのバランスもぐっと上がると思う。けど、そんなことは承知の上での組合せのはずで、だから聴きやすさは後回しの感があったけど、尖り気味の音の中でのようこさんの歌声は憂い含みの存在感。
2ndがお目当ての早川さん。脇を固めるのは、多分これが今の早川さんの当たり前の佐久間正英のギターと、そこにアコーディオンの熊坂るつこ、ヴィオラのトビウオリアキ。昨年、早川さんがピットインでこまっちゃクレズマにフィーチャーされたのを聴き、そのすぐ後にスターパインズでFishmansのリズム隊との共演を見た。この2回がオレの知っている早川さんの歌声だったのだけど、今夜はその2つの時よりも歌声の強さが際立つ。ピアノを弾きつつの歌う事への感情は、ブルースだと思う。ここまで力強い事が嬉しい。更に佐久間さんのギターは時折強烈にロックの音でソロをかまし、そこに思いっきり聞き耳を立ててしまう。トビウオリアキのヴィオラはアコースティックという言葉より、木の音が響く。そして、子供みたいな顔した熊坂さんは演奏に気持ちが入るタイプの様で、動作が大きくなったりしながらの力演。どの曲も耳が知っている。その中でも、「この世で一番キレイなもの」が、個人的な特別。ジャックスのCDは持っていたけれど、正直、過去の音の勉強としてしか接することが出来なかった。だけど、それでも何かを感じたのか、早川さんが音楽活動を再開し、『この世で一番キレイなもの』がリリースされた時には躊躇無く手にした。そしてその最初の曲、「この世で一番キレイなもの」がたどたどしくも絶対に忘れられない存在感で入り込んできて、このアルバムは何度も何度も繰り返した。それを目の前で歌われる。その時の気持ちは説明不要。
3rdはシベールの日曜日。一応事前に調べていて、まだ20代前半の若いバンド、しかも、裸のラリーズが引き合いに出される。かなり大きい音での演奏らしい。という事で、キャリアで考えれば1stのはずのこのバンドがトリ。それはその音を考えれば、まあ、そうだろう。して実際、かなりの大音響。今年122本目のライブ鑑賞だったけど、間違いなくその中で最大音量。耳がやられると思い、オレの得意技のナチュラルな耳栓で音量を勝手に下げた。その音量の中にアヴァンなものは皆無で、やっている事の手本はラリーズではなく、VU〜シューゲイザーの流れだと思う。なので実は以外に素直な音楽。楽曲も、音に惑わされなければポップに感じる事が出来る。2本のギターが歪みまくる中で、ベースは重低音では無いけれど、それでもハッキリとした低い音で真ん中にいて、楽曲は基本的にミドルテンポで8小節ぐらいを只管繰り返すというタイプだったのだけど、それをわからせるのがベースの音だった。ドラムは殆ど金物の音しか聴き取れず、バスの音を拾うことは出来なかった。普段、アヴァンとかフリーの強烈に接している耳では、まだ、このバンドに凄みは感じられない。だけど、あの音量をコントロールしていたし、90分という長いセットを音を途切れさせずに演奏し続ける姿勢には、音楽をするモノとしての強い姿勢が見て取れた。今は未知数だけど、彼らの若さを考えれば、このまま続けてくれれば、より面白いものが聴けるはず。