岐路

真っ直ぐか右に曲がるか。右側から見れば真っ直ぐは左側で、オレらしいと思う。けど右という選択、「違う意見の人とも関わり」と、とあるラップにあったように、反対側も知る事で気づく事もあるかも知らん。どうするか、具体的に決めないといけない時間まであと10歩ぐらい。とか書くと、なんか理念的な話になるのだけど、違う。今夜のライブ鑑賞をどっちにするか、マジで右に曲がるか真っ直ぐ(左)行くか、歩きながら考えた。真っ直ぐ行けばバス停に辿り着いて渋谷駅まで行って、そこからまたバスに乗ってスーパーデラックス。右に曲がればゴチャゴチャ曲がったりしながら駒場東大前に行って、そこから井の頭線で吉祥寺に行ってJRに乗り換えて西荻窪。結果、右に曲がった。SDLXではMarginal Consort。前回見たのは小沢靖存命中の2007年。3年ぶりに足を向けるつもりだった。けどアケタの店を選択(吉祥寺でJRに乗り換えた際、間違って三鷹に行ってしまったのはご愛嬌)。八木美知依、本田珠也、壷井彰久というトリオを選択。こっちにした理由はあった。今日も朝からDerek Bailey聴きまくりで、やはりその音に惚れ惚れして、あの音を思うと八木さんの音を聴きたい気分になる。何故かオレには、今まで聴いた音の中で最もBaileyを思わせるのが八木さん。音色だけじゃなくて、両者のアブストラクトにもそう思う。やってることは全然違うけど。
即興なのか八木さんの曲をやるのか、全くわからない中で始まった演奏はすぐにアグレッシヴ。即興。さすがのアケタの店、音の臨場感は半端なし。20弦箏で始まった八木さんは途中で17弦に移動するのだけど、個人的には20弦の音色の切り込みに嵌る。ピアノの様にも響く。
それに音を絡めるヴァイオリンの壷井。壷井の演奏は今年の2月にEraとして1セットを見たのみだったけど、その時はヴァイオリンらしい音色で終始した印象。だけど今夜は違う。途中で持ち替えたエレクトリックなヴァイオリンで多々の音色。エフェクトで音の弄り。更に音楽の語彙の多さ。Eraの時と全然違うじゃん。音が上がっていくときはRovoみたいになったりもする。
2人を鼓舞する本田のドラム。絶え間なく続くビート。PNLを思い出す。今までに何度か本田の演奏は聴いている。持ってかれた記憶もあるけど、今夜は個人的に1番持ってかれた。なんか凄かった。形容がない。フリージャズからもっと違う、アグレッシヴな音だった。
強烈から音数を減らした方向に動いたりしながら演奏が進み、八木さんの「十六夜」に移行。こうなると、ここまでの即興は曲のイントロか?って思ってしまう。この構成に参った。
いい時間なので端折るけど、2ndも同じ傾向。即興の後に八木さんの曲(タイトルは言わなかった)。多分両セットとも1時間には満たない演奏だったと思うのだけど、この演奏の時間は間延びを殆どなくした圧縮だと思う。
アンコール時のMCで壷井が、今年お気に入りのエレアコなヴァイオリンは最初に使っただけで、後はエレクトリックな方を使うしかなかったと言って、笑わせる。だけどそのエレクトリックなヴァイオリンが多用されたおかげで壷井という人の面白さがわかったし、アンコールではエレクトリックなままのヴァイオリンで美しく奏でる。メインのはずの八木さんはそれを若干不穏気味な音でバックアップしていてコントラスト。
という事で、今夜で今年のライブ鑑賞、じゃずじゃーの部は完了。Sidsel Endresen&八木さんのライブで本編は終わった感があったのだけど、今夜はボートラ。ボートラは蛇足な時もあるのだけど、今夜はボートラ付きを買ってよかったと思わせるパターン。
今数えてみたら、今年、八木さんの演奏を見たのは17回。今年見たライブで、最も多く見た演奏者は八木さんかもしれない。

しまった、今日は・・・。