Nik Baertsch's Ronin

正式にはNik Bärtschで、でも文字コードの扱いでNik Bartschと表記してしまいがちだけど、その場合はNik Baertschとするのがよいらしい。難しい。
昨年11月に続いてのNik Baertsch's Roninのライブ。その時は1stがBaertschとImre Thormannのデュオで2ndがRoninだった。今夜はRonin名義のみ、だけど、1セットという事で、なんか微妙に損した気分が無いわけでもない。と、始まるまで考えたりしてた。ちなみに今夜は場内禁煙。なので始まる前にピットインの外にある灰皿のとこで一服。二服。
個人的に、Roninの録音物にはあまり違いを感じていない。持っているのは新作『Llyria』を含めたECMからリリースされたものだけだけど、それぞれにスタイルの違いも見つけてないし、元々曲を覚える気持ちがあまりないので、どれも同じ様に思っている。でもそれでも新作も買っているのはこのスタイルを気に入っているからで、そのスタイルはミニマルだと思っているのだけど、それをやられるとオレは弱い。徹底的に弱い。繰り返すけど弱い。繰り返すから弱い。だからReichとかGrassとかJeff Millsとか、時々そういうのに嵌りきってしまうのだけど、Roninのミニマルはそれらと同様、でも、違う。録音物を作るかそれを再生するMillsはこの際外すけど、ReichやGrassを演奏する連中は正確が何よりもで、決まったとおりに譜面を終えたいはず。勿論Roninもミス無く演奏を進めたいだろうけど、そこが全部ではない。はず。かなり照明を落とした状態での演奏に、正確無比を中心にするとは思えない。そこにズレが出る事がライブという面白さの要素でもあると思う。
1つの曲の演奏を聴いている最中に自分の耳が向く音が変わっていく事に気付く。自分が捕まえた中心が変わっていく。それはミニマルと言っても只管繰り返される圧迫感とは異なった変化をもっているからだと思うのだけど、それぞれの楽器を聴き分けてみるとそれぞれが別々のパーツを持ち寄って、複合的に絡み合っている。これは録音物を聴いている時にはあまり感じなかった。
ドラムのKaspar RastとパーカッションのAndi Pupatoは別々にビートをかましたり、だけどお互いで1つのパターンを組み上げたりする。リズム楽器なのに耳がこっちじゃない時は、どっちも上モノに聴こえてしまう。
一応ZEN Funkというグルーヴのあるバンド(だけどファンキーとは違う)なので、楽器的に一番優位なのはエレベ(Bjoern Meyerの代役?)だと思うのだけど、でもこのベースがアヴァン系に多い重低音での空間支配型とは全く異なり、線の細い音。さらに、テクノの様に間の開いたベース音の差込だったり、テクニカルなフレーズではフュージョン的に聴こえたりする。
ベースがガツガツしない事で、バスクラとかサックス(多分テナー)という低い音の管楽器を扱うShaの音が活きる。昨年11月のログにも書いたので同じ事は書きたくないけど、このShaの音がこのバンドで1番ジャジー。でも、アドリブは殆ど無いはずで、なのでやっぱりMorphineのバリトンを思い出した。
Shaに限らず、恐らく殆どがアドリブ的な要素を持ち込めないのがRoninだと思う。唯一、リーダーのBaertschにはその部分があるか? 曲のイントロやつなぎの部分がそれになっていると思う。でもそこのアプローチは音響的な面が強く、ピアノの弦に触れることで音を響かせないようにしたり、音数で間を埋めるという事もしない。全体的にちょっと音が弄られている感じがしたのだけど、その中でも特にピアノは残響が強く感じる事があって、その音でBaertschが同じコードを繰り返すとディレイがかかったように聴こえ、ダブみたいで面白かった。
1セットとは言っても長めの1セットで、さらに2回のアンコールがあり、結局21:30よりも22:00に近い時間に終わった。ジャズ系の箱では珍しいそういうやり方とか、緑色のフラッシュや紫色の蛍光灯を使った演出もあり、普段と違うピットインでのライブ鑑賞。でも、このバンド、もう少しだけ若い層の客が増えてもいいはず。それにこのライブなら、出来ればスタンディングな状態で見たい。そういうライブだから、もっと客層が入り混じってもいいはず。
で、明日は同じ様にピアニストがリーダーのバンドながら、全く違う方向のSten Sandell Trioのライブ。同じ場所でこの2つが連続するなんて偶然だろうけど、連荘するオレにとっては嬉しいバランス。PNLの激ヤバなビート、だけじゃないよ、SSTは。