八木美知依 / 須川崇志 / 田中徳崇

「ジャズ、ではないはず。」とか書いてましたが、今日のクラシックス、特に1stは、ジャズ。だと思います。
ジャズと思うか思わないかは、大体、八木さんの音で勝手に決めているのだけど、ジャズの様な枠でも八木さんの箏が独特な音色を扱うと、そっから外れているように思う。だけど今夜の最初の演奏で、二十絃箏はギターだったと思う。特有の音の羅列も抑え気味に聴こえた。名前もろくに知らなかったベースの須川と、2セット、フルで演奏するのを見るのは多分今夜が初めてだった田中。3人のバランスが出来すぎなぐらいに嵌っていた。
少々長めの最初の次は、八木さんがミニマルに叩く。Reichっぽいと思ったけど、これがピアノならGlassか?とか、そういう事を思ってニヤつく。オレはミニマルが好きすぎる。田中と須川は決してミニマルという感じじゃないけれど、だから余計、面白い。
1stの最後は、八木さんの虚飾の無い歌唱付きの「十六夜」。以前にも聴いている曲だけど、今夜の演奏は文字通り美しい演奏。この演奏、あまりにも良くて、来月のピットインでのダブル・トリオは趣き変えないとキツイ気がする。
2ndの最初の曲は多分なんらかのポップ音楽だと思うのだけど、聴いた事あるようでないようで、もどかしい。そのメロを八木さんから須川が受け継ぎ、この若いベース奏者の音を聴きながらなんとなくWyattの「Shipbuilding」を思ったのだけど、その後Keith Jarrett Trioが演奏した「My Back Pages」を思う。順番は違うのだけど、八木さんがJarrettのピアノ的で、須川Charlie Hadenという事なのだけど、そういえば須川、Hadenの個性に近い気がした。若いのにガツガツしていない須川は時折チェロに持ち替えたりするのだけど、もう既に自分らしさというのがあると思う。日本の若いアコベ奏者を殆ど知らないのだけど、こういう奏者がいるとホッとする。
続いて、現在来日中という、ノルウェーのSinikka Langelandがゲストで加わる。扱うのは歌声とカンテレという楽器。カンテレはハープをコンパクトにしてテーブルトップにしたような感じの楽器で、だから箏と親近性があるのだけど、音色は違う。個人的にはカンテレの音色は琉琴を思い出した。その音色も良かったのだけど、Langelandの開放的な歌声が良くて、かなり得した気分。演奏は多分Langelandの持ち歌で、これ、他の3人は即興的に合わせたのか、一応リハしたのか知らないけれど、でも多分須川がベースを入れる時に「こんな感じでOKですか?」な顔してたので、即興的な気がするのだけど、完全にアレンジしてない感じがただの歌ものにならない。多分、ノルウェーのフォーク音楽だと思うのだけど、これがプログレッシヴに演奏されて、こんなの今まで聴いた事無いな、と。
2セット、田中が叩くの意識して聴いていた。パワフルとかスピードとか手数とか、そういうすぐにわかる事を多用してくれればわかりやすいのだけど、そういう感じではないので残念ながらオレには、田中の演奏に、らしい個性というものを見つけきれていない。だけどそれがわからずとも実は単純が無い色んな事を聴かせてくれていて、これまでには気付かなかったパーカッシヴな面とかも含めて、このドラムには飽きない、と、思った。