ヤン富田

ヤン富田の音楽をそんなに積極的に聴いているわけではない。でも、多少CDは持っているし、存在感の面白い人だと思っていた。で、そのヤン富田のコンサートがあると知り、別に何年もぶりのコンサートって訳じゃないと思うのだけど、今回はそれを知る事になったので、折角の機会の逃す手は無い。

が、日本科学未来館のシンボルゾーンでのライブ。それはどこ?、東京?と、頭をひねる。そしてお台場ら辺とわかる。都内でもかなり苦手なあの辺か。ゆりかもめも、Zeppに教授のライブを見に行った時に乗っただけで、イマドキの日本のサイズに合わない小さな車両にゲンナリしたことを思い出す。で、渋谷を起点に行き方を調べると、埼京線りんかい線とやらに直結して、最寄ではないけれどまあまあ近いところに止まる事を知りそれを選択。所要時間も意外に短い。このライブは自由席で、すでにチケット完売の報せも知っていたので、あまりギリギリに行くと変なとこに座らされる可能性も考えて15分ほど前に着くことを計算。そして渋谷駅。不測の事態。埼京線が人身事故の関係で止まっている。だけど反対側は動いている。という事は絶望的な状況ではないと思って埼京線が動くのを待つ。失敗。結局オレが日本科学未来館というとこに辿り着いたのは、既に開演時間を過ぎていた。だけどまだ演奏は始まってなくて、運は残っていた。



が、結局座れない・・・。



ヤン富田のスティール・パンの独奏で始まる。スティール・パンをドラム缶と呼ぶヤン富田。多分この呼びかたを気に入っているのだろう。オレも今後はそう呼ぶ事に決めた。

被験者と呼ばれる人を座らせ、その脳波から得られるデータを使って演奏が行われたり、ヤン富田自身の腕の脈打ちからも同じ様な試み。これらの演奏はホワイトノイズがあったりアナログ・シンセの音があったりして、上モノはアヴァンギャルドレトロ・フューチャーな雰囲気。それに人間の持つ当たり前のビートが常にあって、それが不規則にずれる変化があって、Reich的。このずれの感覚をReichは意識的に音楽しているのかも知れない。人間というか動物と言うか、そういうものは生きていることがビートを持ち続ける事になるという当たり前。音とオフの繰り返し。リズムを取るとかそういう事は、自分をそれに同期させるという行為? 人間も含めて動物はデジタル。そういう事が頭の中に浮かんでいた。



前半が個人的には面白かった。音出しながら説明とか、斬新。その後は長過ぎるMCがあったり、終盤にはキャロライン・ノヴァクこと大野由美子とスージー・キムがDoopeesとして登場したり、ヤン富田を色々手伝っていた高木完と誰だかよくわからない人がオールド・スクールなヒップホップでポエトリー・リーディング&ラップしたりと、ポップな側も見せたりしていたのだけど、ちょっと強引な感じ。それと、時間が無いので終わるといいつつライブに関わった人を紹介し続けるのはちょっと・・・。その時間があればもう1曲ぐらい演奏出来たはず。



と、後半はあまり印象が良くないのだけど、音楽と関係無いところも作用。それは2時間半を超えるこのライブを立ったままで見続けるのはかなりきつかったという事。多分今夜の客の3%程しかこの苦痛は共感できない。オレはライブを立見するのは好きなんだけど、それはやはり体の動く音楽であるという事が前提。



音は程好く纏まっていた。個人的にはもっと音が大きいほうが好みだけど、この場でこれ以上はバランスが悪いのだろう。そのおかげで全体的に品の良いアヴァンギャルドなライブという印象。



次の機会があれば、座って見たい。