T.I.T. TRIO

横井一江さんの紹介でミュージシャンがステージに登場。ピアノの高瀬アキ、ベースの井野信義、ドラムの田中徳崇。その紹介によると、高瀬さんのトリオ(ドラムとベースという意味)での日本での演奏は20年ぶりぐらいだとか。



今年は高瀬さんのライブを見るのは2度目。前回と同じくピットイン。高瀬さんのライブを見たのは一昨年が初で、昨年と今年はそれぞれ2回ずつ見れている。全部ピットインでだけど。初めは、フリージャズの高名な人だしCDも持ってるし、一度ぐらいは見ておくかという軽い気持ちだった。そこで高瀬さんのライブでのピアノの音色に惚れる。ライブで聴いたピアノの音色で一番好きな音色と言ってもいい。高瀬さんが弾く時だけ、ピアノの音が他とは違って聴こえる。

勿論今夜もそうだったけど、1stはこんな感じだっけか?と少し思っていた。いつもはもっと引き込まれて、あっという間にライブが終わる印象なのに今夜はそうでもない。それは田中の演奏をハッキリとしたジャズという場で初めて聴く機会だったというのもあって、そこの興味も強かったせいかもしれない。

だけど2nd、ここはあっという間。長すぎる休憩時間にげんなりし、やっと2nd始まるかと、かなりまどろんだ状態の中、田中が1stでは聴けなかったような鋭くデカい音をいきなりかます。「起きろって?」とか思いながら、そのせいで結構目が覚め、その後はあっという間に演奏に引き込まれた。

高瀬さんと田中が初めての組合せという事で、曲じゃなくて即興的に演奏を進めたとの事だったのだけど、そういう演奏の方が面白かった。1stではMonkの曲もやったりしてたのだけど、それよりも高瀬さんのオリジナルなのか即興なのかよくわからない曲の方がカッコよかった。

高瀬さんのピアノは音色だけじゃない。日本のフリージャズなピアニストが多用するいわゆるドシャメシャな展開が殆ど無くて、そこにもかなり引かれている。オレはドシャメシャ弾かれるのが苦手で、だから高橋悠治の即興演奏に感銘を受けたり、定村史朗のライブでの中島ノブユキが結構印象に残ったりしている。高瀬さんのアドリブも、フリージャズの常套手段から離れているように思えて、そこがとにかく気に入ってしまう。

田中のセッション的な演奏は何度か見ているけれど、その中では今年の頭だったか、クラシックスでの臨場感を溢れる演奏が印象深い。そこには力強さは感じなかったのだけど、今夜は時折強い音を叩き込み、そして何より細かいスピード感が生む独特の感覚が面白い。なんとなくサックスとの即興デュオとか聴いてみたい。

ピアノとドラムが単音の粒を撒き散らす中、井野さんはアコベらしい太い余裕のある音で定位。さらにあのアルコは、このトリオではより引立つ。なんかホント、オレは井野さんのアルコがどんどん記憶される。