定村×芳垣カルテット

今夜はどっちか迷った。スーパーデラックスでは『奇想の系譜 其の一』でGideon JuckesのバンドSETSUBUN BEAN UNITのレコ発ライブ。悩んでクラシックスの『定村×芳垣カルテット』を選択。昨年12月にSDLXで見た『芳垣・定村 Session』の印象が今でも残っていた。



とりあえずクラシックスのHPから面子をコピペ。

定村史朗(vln From N.Y)/芳垣安洋(ds)/田中信正(PF)/井上陽介(b)

ちょっと手を加えた。クラシックスのHPには井上の楽器が端折られていた・・・。



どういう演奏がされるのかはあまり考えてなかった。あえて言えばSDLXの時の様なセッションが少し頭に浮かんでいたのだけど、演奏されたのはジャズ。クラシックスというハコにはジャズのイメージからは外れているのだけど、それでもここの雰囲気の中に似合うジャズはあって、それだった。

1stはJames Blood Ulmerの「多分「Moons Shine」と言ったと思うのだけど自信無い」、続いて「定村がNYで競演を重ねているというミュージシャンの曲、確か「Soulなんとか」」、そしてChaeles Mingusの「Canon」、Thelonious Monkの「Brilliant Corners」。

2ndの最初の曲は誰の曲かというMCは無く、でも聴き覚えのある曲で、多分Ornette Colemanの曲。続いて「Autumn Leaves」、John Coltraneの「Naima」、最後も曲も演奏前には紹介が無く、でも聴き覚えのある曲で、Duke EllingtonかMingusの曲だよなあと思った。演奏後拍手されている最中に「・・・Blues」と言っていたので、もしかすると「St. Louis Blues」?、いや、違うかも。まあいい。



Eddie Palmieriとの共演も残されている定村。それを基にすればラテン〜フュージョン寄りの演奏者とインプットされる。だけどそのスタイルはラテン的な熱とは異なり、多様にフレーズ。ジャズのヴァイオリンというものは聴く事は殆ど無いのだけど、これはそれにあてはまるのだろうと。その音色とクラシックスの相性もよく、芳垣が積極的に共演するのも納得。

今夜最もジャズだったのは間違いなく井上。たとえば「枯葉」。テーマを若干崩し実に儀アブストラクト気味に進める定村の音をジャズに引き戻すのは井上の音。聴いたらやられるような音なのジャズの太さ。このベースの魅力がジャズだと思う。

田中は相変わらずの才気。だけど行き過ぎず、ちゃんとジャズとする事の意識は高かったような気がする。ジャジーじゃないけどジャズになる音の選び、やっぱこのピアニストは面白い。

そして芳垣。誰かのバックでのジャズ・ドラマーな芳垣は、ブラシ等を用いてジャジーなセンスを見せるのだけど、今夜は連名である事から、定村を前面に押し出す構成でありながらもビートを妥協せず。「Brilliant Corners」での田中のとの白熱のデュオ状態とか、これだけでも来て良かったと思えるし、「Autumn Leaves」だったか、かなり強めのカッコいいベースだなと思って井上を見ると、指の動きと音が合わない。まさかと思って芳垣を見ると、そのバスドラがベースを作っている。Wベース代わりのバス音は珍しいことじゃないけれど、Wベースの様なバスドラを作り出すとは・・・。



客席の寂しさが少し残念だったけれど、大人のフリーなジャズはそういう事に左右されずに演奏する猛者のらしさだった。