■ENSEMBLES 09 スペシャル・コンサート■

大友良英4days、2日目。当然ピットイン。



今夜はギターの大友、ベースの水谷浩章、ドラムの芳垣安洋。その名も大友良英トリオ。・・・。昨夜の様な音楽をやっていない人を平気でステージに上げるのは、こういう手堅い事を用意しているからだろうと思う。それとこのトリオ、フリージャズという事になっているはずなので、それならONJT(Otomo Yoshihide's New Jazz Trio)と名付けてくれればわかりやすいのにと、何回か思った。でも多分、そうしないなんらかの大きな、とてもオレ如きには想像もつかない崇高な理由があるか、或いは単になんとなくか。まあどうでもいい。



この前の日曜行くつもりだった内橋和久と外山明のデュオ。だけどはずせない用事で行くことが出来ず、このデュオを初めて見逃したのだけど、今夜はそのデュオの様に、本来客席のあるところの中央に3人が向き合って客が周りを取り囲むスタイル。実はこれ、面白いのだけど、良し悪しはある。



1stはセットをフルで1曲の演奏。大友が小さめの編成で演奏する時、必ずどこかに「Lonely Woman」な瞬間が出てくるのだけど、それを慎重に避けるような演奏。アンチクライマックスとまで言わないけれど、音圧で圧倒する瞬間は殆ど無い。その手前には何度も行くけれど、踏み止まる。3者ともそういう方向になっていて、そのせいで逆に聴く為の集中力を欠く事が出来ない。まあ、居眠りしている客多かったけどな。



2ndは2曲の演奏。最初の演奏の初っ端、フリーインプロを思わせるアプローチ。そこから緩やかにフリージャズに変わる。アヴァンな大友の音が徐々に浮き上がる。芳垣はスピードと手数はあっても強く叩き込まず、徐々に他の音が掃け、芳垣の無伴奏ソロ状態ではかなり単純化されたリズムパターンで色々とはぐらかす。だけどこの演奏で印象的だったのは、水谷のソロ。これも他の音が無い状態だったのだけど、ギターをストロークするように、それで4つの弦の音が絶妙に混じりあって、あまり聴いた事の無い音だった。

次の演奏は、大友のギターがまるでCharlie Hadenの曲を奏でるように、アメリカーナ的な旋律を紡ぐ。大友らしからぬと、思った。若干小洒落てすら聴こえる場面もあり、なんとなくハッとする。このまま、アヴァンに音を張り上げずにこの演奏が終わってくれれば、、、と思っていたら、あのU字型の金具を取り出し弦に押し当てる。ああ、ここからアヴァンになるのかなあと思いながら動向を追う。徐々に音がそういう方に動きつつある。まあ仕方ないよなと思っていたのだけど、踏み止まる。U字金具を押し当てても、それはいつものそれに比べれば明らかに抑えていて、さらに終盤はアンプのボリュームも絞る。結果、大友良英の見たことの無い一面を見た様な気がした。



アンコールは「Lonely Woman」。ここは煽り気味な芳垣に惑わされず、大友が自身の解釈でメロを奏でる。大友バージョンの「Lonely Woman」は何度か聴いているけれど、今夜の音の出し方が最も個性的だったと思う。



今夜のセッティングなのだけど、このパターンの場合、座った席で音の聴こえ方が大きく異なる。特にギターとベースはそのアンプの向きに対して自分がどこに座っているかで、音の聴こえ方がかなり変わる。それは内橋/外山デュオで知っていたし、内橋はそれを気にしてだと思うのだけど、前に見た時にはアンプを上向きにしていた。なので今度は、このトリオが普通にステージで演奏しているのを聴きたい。