Tyshawn Sorey

MMの2008年ベストCDジャズ部門の1位がTyshawn Soreyの『That / Not』で、これは「じゃずじゃ」で取り上げられていたので気にはなっていたけれど、ネットでも取り寄せに時間がかかるものだったので、めんどくさくて手に入れていなかった。だけど、流石に1位に選出されると興味が抑えられず、amazon.comの方を使用。昨年末に届いて、それから何度繰り返したか・・・。



「じゃずじゃ」によれば、Tyshawn Soreyはまだ30歳にも満たないジャズ系のドラマー。もちろんフリーとかアヴァン寄り(だと思う)。ドラマーではあるけれど、ピアノやトロンボーンもこなすらしい。

『That / Not』は初の自身名義の作品。2枚組。ドラマーがリーダーのジャズ系の作品にいくらかの偏見を持ってしまっているため手が出しにくかった。だけど手に入れて何度も繰り返した結果、Tyshawn Soreyという作曲家(或いはプロデューサー)の作品と思うようになった。



楽器の咆哮ではなく、音数の少ないセッションが主体。エレクトリックな楽器を使わない音響派、繊細さもあることを思えば、アルゼンチン音響派的な方向とリンクしやすい。

このアルバムの肝は44分のトラック「Permutations for Solo Piano」だと思う。淡々と、間を使って繰り返されるピアノの不穏な和音。手法的には現代音楽。だけど、現代音楽のそれは繰り返し聴きたくなる事はないのに、何故か「Permutations for Solo Piano」は何度も聴きたくなる。例えばこれがライブで演奏されたら閉口。だけど、録音物として自分の好きな環境と状態で接すると中毒。



ジャズという枠にこだわってこの作品を聴くと、多分苦い。どちらかといえば、音響派と呼ばれる枠に理解のある方が受け入れやすいはず。あえてジャズ側で言えば、Art Ensemble of Chicagoの『People in Sorrow』を気に入っているならば、この作品にも共通項を見つけられる気がする。けれど、何らかの理由があるかもしれないけれど、『People in Sorrow』が長い事廃盤状態である事を思えばジャズ聴きはその作品を望んでいないという事になりそうで、この作品が昨年リリースされたジャズもののベストという位置付けは、ある意味挑発的。









Tyshawn Sorey 『That / Not』