高瀬アキ&Louis Sclavis DUO

先月はHavard Wiik、藤井郷子さん、田中正信と、オレの好きなピアニストのライブがことごとく見れたという珍しい月だった。こうやって固まることもあるんだなあと思っていたのだけど、月が変わって今夜、止めの様にピットインで高瀬アキさんのライブ。この4人を立て続けに見てしまうとは・・・。オレの好きなピアニスト、今のところは他にいませんけど? あ、ライブでの演奏は知らないけれど、あのピアニスト忘れてた・・・。



今回の高瀬さんのライブはLouis Sclavisという、バスクラをメインに扱うフランスの管楽器奏者とのデュオ。全く知らない名前。別に問題ない。



3回ほど見ている高瀬さんのライブの集客は、こんなもんなんだなという感じだった。なので今夜、しかも月曜という結構厳しい曜日なので客席は余裕な状態になるんだろうと思いながらも、開場前に着く。が、予想外の待ち人。「え?」と思った。この手のライブとしては珍しいぐらいの集客。



今夜の2人は横浜開港150周年記念企画『横浜発−鏡像』というイベントでの演奏の為の来日らしいのだけど、『YOKOHAMA』というアルバムも作っていて、それの欧州でのリリースは秋らしいのだけど、日本先行でアルバムのリリースをしてついでにツアーもしてしまえというノリらしい。なので演奏されたのは、『YOKOHAMA』に収録されている高瀬さんとSclavisのオリジナル。



今までにも書いているけれど、高瀬さんのピアノのその音色に抗し難い魅力を感じている。凛とした音色。単音は勿論、複音でもそれぞれが拾えるような音。この音を他の人のライブでは聴いていない。今夜も勿論その音。この音はどうなっているのか?って、思う。恐らく、他のピアニストよりも鍵盤の中央を正確に叩いているんじゃないだろうか?、そうじゃなければ、同じピットインで色んなピアニストの演奏を聴いているのに、高瀬さんの音だけが異なって聴こえる理由がハッキリしない。

そして音色だけじゃなくて、アドリブ時の、特に左側の鍵盤を強く意識させる時の演奏が強く印象に残る。ジャジーではないけれど、ジャズとしか表現できない演奏。



そしてLouis Sclavis。バスクラクラリネットを使い分けて演奏。サックス奏者にバスクラを吹く人はいるけれど、バスクラがメインな楽器の人のライブは初めて(多分)。

他との違いみたいなことを探る気は無かったし、その対象もいないのだけど、やはり、とにかく上手い。淀みない音色。本編最後の演奏を除いてフリーキーな音色はほんの少し、味付け程度にしか使わない。完全なコントロールがあるからこそそれだし、まるでColtraneか武田和命がバラッドを吹いているような、テナー・サックスと聴き間違う瞬間も多々。元々「Zen(多分、禅)」というタイトルだったというSclavisの曲では、クラリネットで尺八を模倣して見せる。そして圧巻、2ndのラストの前の曲でのソロ。ここまでにも聴かせていた循環奏法。それが、とにかく凄かった。ここまで長い循環奏法は聴いた事が無かった。あまりの凄さに、口あんぐりでSclavisを見つめてしまう。そしてそれを受けての高瀬さんのソロも凄まじく、この演奏が無かったとしても全く満足だったのに、それを超える感想。