Liam O Maonlai

まだ高校なガキの頃、U2のBonoがプッシュしたというHothouse Flowersがメジャーデビューして、その1stシングル「Don't Go」をラジオで聴いて即気に入り、『People』を手にした。アコースティックな面とキャッチーさも持ち合わせた「Don't Go」という楽曲は勿論、何よりもソウルフルなLiam O Maonlaiの歌に惚れた。それからHothouse Flowersは順調にアルバムをリリースしていたのだけど、アルバムがリリースされれば手にしながらも、ある時からあまり耳にしなくなった。理由は覚えていないのだけど、多分歌モノから離れるようになったのだと思う。

3年ほど前、Liamのソロ作『Rian』がリリースされる。それはHothouse Flowersの様なアイリッシュが入り混じったロックではなく、インストすらも入ったアイルランドな音楽だった。Liamというシンガーは、最終的にはVan Morrisonになる人だと勝手に思っていたのでここまで極端に音楽が変わることに驚いたけれど、それはLiamを再認識させる結果になった。そして今年『to be touched』がリリース。『Rian』とは違ってピアノの弾語りを主軸にした歌モノで、だけどあのソウルフルな歌い方からは離れていて、Liamがソロ名義でやりたい事は自身のルーツの確認なんだろうと、勝手に考えた。今夜、このタイミングでの来日。『to be touched』のコ・プロで、明日国際フォーラムでライブをやるThe Swell Seasonというユニットがゲストとして連れてくる事を利用してのライブのようだけど、そんな事はどうでもいい。というか、Swell Seasonというユニットの事は全く知らないのだけど、よくやってくれた。Liamのライブは国際フォーラムに比べれば小さめのハコ(渋谷 duo music exchange)。



オープニングに山口洋。20分ほどソロで演奏。ギター上手いなあという印象が残る。それと、ここで山口バージョンの「満月の夕」を初めて聴く機会になった。



メインのLiamは2枚のソロアルバムからの演奏。「本物のLiamが・・・」とか、やっぱり思う。しかもいきなりアカペラ。スピリチュアルな雰囲気。そしてデカいパーランクーの様なものを叩きながらの演奏や、縦笛での演奏など、『Rian』の世界が目の前で再現される。そしてピアノの弾き語り。ここは当然『to be touched』。静粛な気分にさえなりつつ気持ちが入り込もうとすると休憩。演奏時間は30分ぐらいだっただろうか? 多分山口の演奏時間を合わせて丁度1時間ぐらいという事でセットを割ったはず。一気に行けよという気持ちもありながら、2ndを待つ。

2nd。このセットは殆どピアノの弾き語りの印象。改めて、Hothouse Flowersのヴォーカルとしての歌い方のみならず、声の印象まで異なる。高音の滑らかさは、Youssou N'Dourまで想起させる。

ゲストとして、Swell Seasonのバンドメンバーのヴァイオリニストが加わった演奏があったり(1stだった気もする・・・)、山口が加わった演奏もあったり、そして結局Swell SeasonのMarketa Irlgovaも登場して、その歌声が追加される。本編の最後は、Hothouse Flowersの「(タイトルは・・・、わからん。失念じゃなくて、Hothouse Flowersの曲は「I'm Sorry」と「Don't Go」と「Love Don't Work This Way」ぐらいしか、タイトルを覚えていない・・・)」。

アンコールは2回。最初のアンコールは縦笛での演奏で、確か2曲。2回目のアンコールはIrlgovaも伴った歌唱。



一番盛り上がったのは、Hothouse Flowersの曲だったと思う。まあ、仕方が無いよなあと。この曲、ちゃんと頭に入っている曲じゃなかったのだけど、演奏された楽曲の中では最もわかりやすい、盛り上がりやすい性質。



個人的には、ライブでLiamの歌を聴く事が出来たというだけでも、それなりの印象が残る。だけど正直な感想としては、ライブという場での音に嵌りこむという状態にはならなかった。「鑑賞」してしまった。途中で気づいたのだけど、ピアノの弾き語りの静粛な雰囲気だけではなくワールド・ミュージック枠での演奏も含めて、というか、そのワールド・ミュージック枠の音楽があったから、余計に「鑑賞」の印象が残った。

ワールド・ミュージックといわれる音楽のライブに多々足を向けているわけじゃないけれど、その少ない経験から、例えばFaiz Ali FaizやDoudou N'Diaye Rose、そして知名定男&大城美佐子のライブでもそうだったのだけど、これらのライブは空気感が似ていて、どこと無くライブの一体感とか興奮というより、展示されているものを眺めてしまうような意識になってしまう。だけど、例えばYoussouやKonono No.1のライブにはそれは無くて、ライブという場所の楽しさがあった。この違いはオレの「凄い人のライブを見る」という意識が働いたのかもしれない。それによって気持ちが崇めて奉るという方に動いたような気がする。それと、別に「鑑賞」になった事に不満があるわけではなくて、そういう風に接する音楽も時にはある、という事。


これは小言なのだけど、オレとしてはかなりカメラマンが鬱陶しいライブでもあった。ここまでカメラマンがウザいライブは今までに無かったかも。3人ぐらいのカメラマンがいて、こいつらがちょろちょろ動き回り、写真を取る。音数の少ないライブの場で、聴いている人のすぐ近く(頭の上とか)でシャッター音を平気で鳴らす。音が聴こえなくても、ウロウロするので視界に入るし、さらにデュオの床がゴム底にくっつきやすいようで、ただ歩くだけでもペタペタと余計な音がする。なんかこいつら、なんなんだろう? こういうの見ると、メディアというものがどんどん嫌いになる。