Bill Laswell presents … Tokyo Rotation 3

二日目。



過去ログを見せないようにしたので前から見てくれている人以外にはわからないのだけど、ここ数年オレは芳垣安洋大友良英のライブ演奏をそれなりに見ている。その中でも今夜は、「凄い演奏だった」という以外の言葉が思い浮かばない。



この間の大友の3days、あれを見て色々思うことはあっても、「凄い演奏だった」という感想にはならなかった。見ているものを満足させるというより、問いかけという面を感じた。そこにもどかしさ。ライブを楽しむという事にそこまで色々考えないといけないのか?と、若干混乱。

芳垣はドラム/パーカッション奏者としての器用さと、バンド・リーダーとしての動き等々、多種の音楽を見せ付けてくれる。オレはある楽器で特定の人を徹底的に気に入るという事はあまりないのだけど、唯一、ドラム/パーカッション奏者として、芳垣の名前がすぐに頭に浮かぶ。それでもセッションなんかで、「そんなもんじゃないよなあ」と思う事が無かったわけじゃない。



1stが始まった途端、その両者が色々を軽く払拭。大友があれだけギターを弾きまくったのは初めて見た。もう1人フロントがいればバッキング的に演奏する事を厭わない性格だと思うのだけど、その性格は、少々押しの弱さにも思えた。今夜はそういうものがなく、音楽的にもジャズとかノイズとかという括りでもなく、とにかくひたすらギターを弾きまくっていて、その活動量に圧倒された。

PNLのパワーと手数に圧倒され、Chris Corsanoのスピードにあっけにとられ、Jim Blackや外山明の奇天烈にほくそ笑んだりしてきたけれど、今夜の芳垣の叩きはそれらを吹き飛ばす、鬼気迫るという形容。

soupというユニットによる作品は聴いた事が無いので、音数少なく演奏が始まった時はアンビエントなセッションになるのかと思ったけれど、すぐに方向転換。あっという間に高テンションな演奏に変わる。Laswellは昨夜と同じく、重低音での音の埋め尽くしで、それを利用して芳垣と大友は音を張り上げる。演奏の構成はあったはずで、その多少の制約が大友をギターの演奏である事に留まり続けさせたように思えたし、それを触発する意味も含めて芳垣は叩き続けていたように思える。このセットは約1時間、演奏が途切れる余裕が無かった。セットが終わった時の芳垣と大友のかなり疲労したような表情に、「2nd大丈夫か?」とすら思った。



セット毎の入れ替制であったため、休憩が1時間取れる事が功を奏したかのように、2ndも高いテンションを持続。このセットのみの中村達也が芳垣と2人で現れ、まずは達也がパワフルに叩き始める。それを聴きながら芳垣は、まずはそれにあわせる様に始まったのだけど、そのうちに徐々に白熱。1stであれだけ叩いたのに、2ndでもまだ体力を残しているとでも言うように、達也に並び、そしてドラムの語彙で違いを見せ付ける。ここ、鳥肌モノ。それでも負けじと喰らい付くかの様な達也はテンションが上がった時に見せる笑っている様な表情に変わり、芳垣もテンションの高い時に見せる厳しい表情。そうこうしている内にLaswellと大友が加わり、音数が混沌とさせる。メガネを飛ばしてしまう芳垣を初めて見た。



アンコールはアヴァンとフリーインプロの中間の様な演奏。



ブレーキ踏んでもなかなか止まれない暴走列車の様な1stだけでも満足してしまっていたけれど、達也が加わったことでビートの数が増え、混沌と同期が伴った2ndも同じく。

「凄い演奏だった」って思った事に、思い出しながらイチイチ理由を書き連ねてしまったけれど、結局は「凄い演奏だった」って事が言いたい。だけ。