坂本龍一

「腐っているからこそロック」なままだと、坂本龍一という人に勝手な反発を持ってしまう。特にパンク寄りだと、Phewの1stシングル『終曲』やFrictionの1stアルバム『軋轢』の件で、余計そうなる。それは、権威もポピュラリティもあるものに対して気に入らないという態度をとる事で、自分がカッコいいという気持ちになれたりしてしまうという事も大きく関係している。だけどよく考えてみれば別にオレが坂本教授に何か酷い目にあわされたわけでもないわけで、こういう勘違いをしていい気分になって、ただそれだけというオチに今更気付く。



それでも一応数枚、坂本教授のCDを持っていて、輸入盤の『Neo Geo』や『SMOOCHY』、さらに『1996』も持っていたのだけど、そっちは誰かに貸して行方不明。別にいいけど。

ネットというアプローチがあると良くない手段で音楽を聴く事が出来て、とある時、手持ち以外の坂本教授の音を聴く機会があって、勝手な反発を持ったまま聴いてみたのだけど、『B-2 Unit』にはかなり殴られた気分。翌日CDを買いに行ったのだけど、廃盤で手に入らず、仕方ないのでその音源で我慢していたら、やっと再発され手に入れて、不正から足を洗えた。『B-2 Unit』以外のものは全部イマイチなのだけど、『B-2 Unit』は頭の良い人が作るものとしては頭が悪くて、なのでカッコいい。

そんなで、『Neo Geo』の再発に手を出す。それは、『Neo Geo』にはIggy Pop参加の「Risky」という曲があり、そのリミックスとPV(DVD)がボーナスとして付属していて、ならまあ買ってもいいかと。久々に改めて聴いたけど、やっぱり「Risky」以外はどうでもいい。



その坂本教授を、新作『Out of Noise』のリリースにあわせてMMが3月号で特集。インタビューぐらい読んでおくかと目を通すと、結構興味深い事が書いてあって、CDはどうやって聴いている?という問いに対して、PCで取り込んでそれを聴くと答え、CDで聴く事はないらしい。基本的なオレと同じ。ヤバイ、共感。さらにインタビュアーが新作につてい、どうせならもう少し実験的なことをやっている連中を集めてもよかったんじゃ?と聞いたところ、大友良英には興味があるのだけど、会った事無いからよくわからんので、向こうからアプローチがあれば・・・と答え、さらにJim O'Rourkeには面識があるらしく、才能があると答えていた。大友に対して上から目線っぽい態度だけど、それはあまり自分から動く性格ではないという話をその前にあったので、必ずしも、偉そうという事でもない。

たとえ話題づくりであったとしても、エネルギー問題に対してそれなりの姿勢を見せている点なども含めて、こういうのはオレは結構支持できたりする。

『Out of Noise』のレコ評が、わかりやすいものではないというモノが目に付き、残念ながらそういうのが好きなオレは、坂本教授に対する今までを払拭するために手にしてみた。もちろん¥1,980の簡易パッケージの方。ホントはAIFFで24bitの高音質版をDLしようかと思ったのだけど妙に高いし、MP3はCDと同じ値段なので損した気持ちになるのを避けた。



難解とか、万人受けしないとか、まあ確かにそううい要素はある。けどさ、思ったほど無愛想ではなくて、多分インプロな音響派を聴いている人達からみればBGMにすら出来る。最初の「hibari」とかEric Satiだと思うし、「firewater」はFenneszだな、と。全体としては一応音響派といった趣なのだけど、只の音響派の場合、弱音でも神経質な音がずっと鳴っていたりして寝る時に聴こうとすると眠れなくなったりするのに、『Out of Noise』は問題無い。なので緩い音響派。アルゼンチン音響派に近い感覚。



その坂本教授、今コンサート・ツアー中らしい。さすがにそれには行かないけれど、Fennesz見たさで最初で最後のつもりで坂本教授のコンサートを見に行って、結局その後Notoとの共演も見て、その時のログが某巨大掲示板でさらされて後にも先にも考えられないぐらいの人がここに来ていた。かなり叩かれるかと思ったのだけど、案外そうでもなくてホッとしたりしたのだけど、なんか、坂本教授絡みって、なんやかんや色々あるな。









坂本龍一 『Out of Noise』