Fennesz

もう、3年ほど前の話。Friction復活の報を受けて、それが名古屋の得三というライブハウスである事を知って、色々考えてチケットを入手。とにかく、Frictionという名前のバンドのライブを逃がしたくなかった。それまでの後悔を何とかするには、その後のアナウンスの無い状態のFrictionのライブを経験するには、名古屋に足を向けるしかなかった。仕事を勝手に早めに切り上げ、生まれて始めて名古屋の地に降り立ったと言うのに、感慨にふける事は端折って得三に行った。

それが、そういう行動の最初で最後だと思っていたのだけど、Fenneszの音を待つのは幾らか辛抱が効かなくなって、3連休だし、京都から参戦するかとか、冗談半分で考え、だけど京都は今井和雄のライブがある日なので無理だとわかって、ならば土曜、要するに今日、名古屋に行くことが無理な日ではない事がハッキリして、考えて、で、行ったさ。名古屋のクアトロ。



仕事じゃなくて新幹線に乗るのだから、出来れば飲みたいだけビールをあおりたかったけれど、着いてへべれけだと何の意味も無いので、我慢してアサヒの黒ラベルを500ml×2で我慢。名古屋駅から地下鉄を乗り継ぎ、パルコの8Fにある名古屋のクアトロに到着したのは開演予定時刻丁度。中に入って驚く。客少ない。さすが洋楽不毛の地名古屋。身をもって体験。場合によっては、名古屋のガキに隅っこに追いやられながら、それでもFenneszの音が聴ければ満足という気持ちで行ったのに、肩透かし。腰砕けたままドリンクチケットをアルコールに変えて(クアトロはどこもドリンクはイマイチとわかった)、AOKI takamasaを待つ。



AOKIは『Live Recordings 2001-2003』と『Private Party』が手元にある状態でしかないけれど、あの独特の、エディットされまくったようなプログラミングの個性は印象が強い。

今夜のライブでは『Private Party』的なものを響かせていたけれど、もちろんあれを単純に再現したものではなく、ひとつのリズム・パターンが中心になった展開。そのリズムを追っていて、AOKI特有のビートとビートの間を繋ぐベース音の扱いに、さすがだな、と。どう聴いても知性的で、エレクトロニカの完成形の1つであるはずの4つ打ちにあった肉体性は無くて、だから激しく体を揺り動かすという事は無いのだけど、そのリズムのシークエンスがいつまでも続いたとしても、なかなか飽き難いだろうと思う。



多分10分ぐらいでセットチェンジは終わって、現在屈指のプログラマーの後を受け、Fenneszがステージに。とうとう目の前にFennesz

Black Sea』の持つダウナーな世界観を、ライブで再現するとどうなるのか?という事は気にかかっていた。AOKIが踊りまくる音ではなかったにせよ、ビートの強さとベースの響きという、エレクトロニカらしい強さを整合感を伴って見せ付けた後だっただけに、『Black Sea』の再現は少々苦しい場面があるのでは?と、思ってしまっていた。Fenneszはラップトップだけではなく、ギターを手にしている。即興ではない演奏で、その持ち手は難しくないか?とも思った。

結果、Fenneszはやはりノイズの持ち主なんだな、という事を再認識。クアトロを埋め尽くす圧倒的なノイズの放出。その中にわずかに潜んでいるメランコリックな音。場によっては響き方が異なってしまうかもしれないけれど、この音の中にいる時は、とにかくただそれだけでよかった。何も考えず、ただ音がまとわり付いてくるのを感じ取って、時間は過ぎた。



21:00ぐらいに終演。21:39の新幹線のチケットを取っていたので、慌ててクアトロを飛び出し名古屋駅に無事到着。帰りの新幹線では黒ラベル500ml×2に加えて、ウイスキーの水割り缶を1個。水割りは、数年前に仕事帰りの新幹線でいい年をしたサラリーマンのおっさんがビールじゃなくてそれをチビチビ飲んでいるのを見て、なんか妙にカッコいいなと思ったのがキッカケで、そこからオレも1本混ぜる事にした。最近は飲み会なんかでもビールのあとは焼酎というのがパターン化しつつあるけれど、やっぱウイスキーだよな。大人は。