Duo Recio-Garcia

※終盤、重要な事を加筆したので、一度目を通された方も再度お目汚しを。



チラシに書いてある事のみを頼りに見に行くパターン。気に入っているミュージシャンやそこからの連なりもいいのだけど、よくわからないけれどわざわざ海外から来ているのだから何かしらの面白さを持っているのだろうと、勝手な憶測を使ってピットインに向かった。

「リヨンの先鋭的音楽家集団ARFIから2人のインプロヴァイザーが再来日!」とピットインには書いてある。リヨンと言えば今フランスで最もサッカーの強い街。ヴォイスでのパフォーマンスのLucia Recioと、サンプラー使いのXavier Garcia。扱うものの組合せ的に危険な感じだけど、そこにバンドネオンの小川紀美代とこの間初めて見たばかりのチェロの坂本弘道が加わるという、逃げ道は用意されている。



1st。の前にまず、即興のヴォーカルというものがあまり好きではない事を白状。そういうもので楽しめたライブは巻上公一のものぐらいで、後は1年ちょっと前のAltered Statesの3daysでの天鼓、同じASの3daysでゲストで登場したUAのそれぐらい。録音物ではSidsel Endresenのものは気に入っている。

という事で、Recioをやはりオレにはあまり楽しめるものではなかった。即興のヴォーカルの、オカルト的な変声の意味がオレに全く理解できず、なんでわざわざそういう声を出す必要があるのか?と、今夜もそういう事を考えてしまう。Recioは決して声量のあるタイプではなく、ヴォーカリゼーションというより、シンガーのアヴァン化といった趣で、なので音圧で圧倒してくれたりもしない。だけど、2セットを通じてメロのあるような普通の歌い方では聴き所もあり、こういう音楽をやるよりも普通に歌ったほうが個性が活きるのでは?と思える。

Garciaのサンプラービットレートが低いような音で、ヒップホップならいいのだけど、前衛ヴォーカルとこの音の絡みだけで音楽し続けられると、眠気を呼ばれた。

2nd。小川さんと坂本が加わる。するとやはり、音の表情が変わる。全く変わる。Garciaの音も他に音が増えることによって効果的になり、Recioも、必要以上にその声に注意する必要も無くなったので、まあ、いいかと。このセットでは小川さんの音が耳に残った。序盤に忍ばせたPiazzollaな曲が効果的。バンドネオンという楽器の持つ独特の雰囲気が、他の音の中にあっても全く臆せずに存在する。その小川さんの音がクローズアップされ、一旦演奏が終わると思った時にGarciaがリズムを刻む。これが青木孝允ばりのアブストラクトでスピード感のあるリズム。カッコいい。そしてセットの後半は坂本のパフォーマンスが目を引く。一昨日と同じくあれやこれやとチェロらしくない音を提示。だけどそれが個人的には少々もったいない気がした。バンドネオンの音があれだけ響くのだから、チェロも楽器の特性を活かした音の方を聴きたかった。だけどまあ、仕方が無い。と思っていたのだけど、いつからかループされていたRecioの声と小川さんのバンドネオンの音が延々続く。そこにRecioは声をのせ、小川さんも音を絡め、だけどもうこれ以上は何も出ないという状態で手が止まっても音が止まらない。このループ、当然Garciaの仕業だと思っていたのだけど、そのGarciaを見ると渋い表情。まさかと思って坂本を見ると、どうも坂本がループさせていたようで、いい加減止まれと思っている周りの空気を読めずに、それに演奏を続けようとする・・・。オレは呆れている。他の客席でも「まだやんの?」な空気。あれしようこれしようとガサガサしている中、他には誰も演奏しようとしないのを見て、やっと演奏が止まった。



坂本というチェロ奏者。面白さは持っているのだけど、今夜の演奏を聴いて、また聴きたいという気持ち無くなった。日本のアングラな所でチェロ奏者という存在は少ないのに、もったいない。この人を上手くコントロール出来る人がいればいいのだろうけど、あの雰囲気から察するに、取り扱い注意なニオイがする。







と、ここまで書いてアップしてあったのだけど、朝、職場でケータイを使ってプライベートなメールをチェックしていると、ブログにコメントのリマインダー。見てみると冷や汗・・・。ケータイからログの書き足しは難しく、とにかく慌てて非公開に変更。そして先ほど再度公開。



コメントを見ていただけばわかるのだけど、あのループの犯人は小川さんでした・・・。へえ・・・。その事実からするとログの内容は変わる。

まず坂本は、ミュージシャンとして演奏を続けようとした事になる。という事は、どうしていいのかわからないところを頑張ってくれた人なわけです。

小川さんは、ググって彼女のブログを見てもらえばわかりますが、自分が発しているループなのに、気づいていなかったらしい・・・。ボケてます。困ったものです。小川さんは昨年レディージェーンでMarco Cappelliとのライブを見ただけだったのだけど、その時も小ボケしてたような記憶があります。華奢な感じがお美しい方なのに残念。仕方が無いのでCD買ってみます。「え?、なんで?」って、バンドネオンの音が頭から離れないからです。

坂本氏には、ここで謹んでお詫び申し上げます。突然敬称がついているのもそういう意味です。失礼いたしました。

が、音そのものの印象が変わるわけではなく、やはりもっとチェロらしい音が聴きたい。色々チャレンジするのはいいのだけど、昨夜の音でも、印象に残っているのはチェロらしい響きのところで、他のガチャガチャしているところはパフォーマンスの印象は残っているのだけど、どんな音だったのかはあんまり記憶できていない。



場末なブログなのであまり人の目に触れていない事が唯一の救い。思い込みで書くと良くないという事と、それでも書いてあったから教えてもらえたという事もあり、色々。やはり功罪あるな、と。