坂田明 × 芳垣安洋 Birthday Special

今日、2/21が坂田明芳垣安洋の誕生日という事で、昨年に続いてピットインでバースデー・ライブ。ところが、演奏の面子の1人である藤原大輔も今日が誕生日という事で3人のバースデー・ライブになった。



1st、まずはその3人での演奏。徐々に熱の上がるタイプのフリージャズ。ソロの先発は藤原で、あまり熱く吹き鳴らさない藤原らしい、Steve Colemanが頭に浮かぶ演奏。その音を知っている芳垣は、藤原に合わせて編みこみの少ない、テクノ的とも言えるバックをつける。少々物足りなさはある。と思っていたら、坂田さんにソロが移ったところでお互いに煽り合う、あっつい演奏。正しくフリーキーな坂田さんと、手数が増えスピードの増す芳垣。タイミングを外し気味の叩きもあり、圧巻。

2曲目、藤原が抜け、ベースの鈴木正人が加わる。スタイルとしてはオーソドックスなトリオになるのだけど、鈴木のバリトン・ギターの様なベースの音はアコベらしい響きが足りず、個人的には好みから外れる。ここでは坂田さんが語りングとフリーキーなピアノの演奏ありと、バラエティ色の強い演奏になった。

1st最後は、鈴木が抜けてゲストという立場でチェロの坂本弘道が加わる。アングラ側でチェロを弾く存在として名前は知っていたけれど音は聴いた事の無かった坂本。ここではその坂本の音の印象が残る。擦弦特有の響きとエレクトリックな処理を上手く使い分け、さらにギターの様に構えた奏法など、インパクトが残る。ここでは坂田さんも芳垣もフリーインプロな演奏になり、まあ、オレの好みな演奏が繰り広げられた事になる。

2ndは坂田さんと芳垣と鈴木に加えてゲスト扱いでピアノの谷川賢作。演奏されたのは「かぼちゃ」という、谷川の父親である谷川俊太郎の詩に谷川が曲を付けたものを演奏。これは当然歌があるという事で、酔っ払い気味の谷川が歌う羽目に・・・。ブルースな曲調で、話し声と歌う声が変わらない谷川の歌は特に気になるようなモノではないのだけど、楽しげな雰囲気がステージ上にありあり。

続けて、またしてもゲスト。小室等。名前は知っているけれど、歌は全く知らなかった小室さん。この人の登場は前の曲で谷川が即興的に歌詞に加えてばらしていたけれど、なんかさすがに驚く。その小室さんが加わった状態で演奏されるのは「死んだ男の残したものは」で、これも歌詞は谷川俊太郎の詩で、作曲は武満徹。まあ、有名な曲なので蛇足か。この曲を小室さんと坂田さんが歌う。藤原も歌メロを吹く。なんか何のライブに来ているのかよくわからなくなったけれど、まあ、いいさ。それもおもしろいだろ。

小室さんと谷川が抜け、さらにまたしてもゲストでクラシックのクラリネット奏者が入る。名前を覚え切れなかったので、ステージ上で語られた断片的な情報(今日既に演奏してきた事 / それはサントリー・ビール(ホールな)での演奏だった事)だけで調べてみた結果、東京交響楽団の十亀正司だと思う(間違っていたらすみません)。「何を演奏すれば?」な十亀だったけど、「何でもやれば皆勝手に演奏する」と坂田さん・・・。じゃあと、演奏を始める十亀はさすがに淀みの無い音色。フルートを聴いているような気分になったりもする。ジャズとは違うこういう音は、こういうアクシデントの様な状況が起きなければなかなか耳にする機会は無い。そこに坂田さんが、淀みまくった音色のクラリネットで絡む。十亀を彩りに変える演奏。藤原は今夜の客には向いていない特殊奏法を持ち込み、人数が増えた場では鈴木のベースもそこそこ雰囲気を作る。徐々に熱が上がる中、芳垣の音が激しくなり、坂本は本物の火花を散らす・・・。

アンコールは、坂田さんとしっぽり決めたい様子の芳垣。だけど坂田さんの一声で坂本藤原鈴木も加わる事に。それでも演奏はクロージングに相応しい、泣きなAylerを思い出させる演奏だった。



結構とっ散らかったライブだった。けど、こういうのもたまにはいいかと。多少のシリアスはあったし、色々見れるのもおもしろいし。終演後に坂田さんのファン(?)の人達が誕生日おめでとうのクラッカーを仕込んでいたりして、ちょっとタイミングが下手なのが笑えたけれど、祝福したいという気持ちが見えてよかったと思う。