山内桂

昨夜のログは少々大人気ないけれど、イチイチ取り繕っている暇は無いのでそのまま。だけど説明不足なところは幾つもあり、そのなかでも山内桂のライブを何度も見ているような書き方になってしまっているところはここで補正したい。

昨夜より前に山内のライブを見たのは、1年以上前のクラシックスの一度だけ。三浦洋子さんとのデュオで、特殊奏法を駆使した演奏。そこにはサックスという楽器の持つイメージの音は無い。その後、三浦さんのCDはすぐに手にし、山内のそれは少し遅れて手にした。特殊奏法だけのCDは欲しくないという考え。だけど、山内のHPにおいてあるサンプルのMP3はミニマルなフレーズを繰り返すもので、それはPhilip Glassは勿論、Eric Dolphyの演奏する「God Bless the Child」の上下するラインを思い浮かばせ、そのサンプルを引き金にして『Patiruma (波照間) 〜Salmo Sax 2〜icon』、残り少なくなりつつある『Salmo Saxicon』、そして昨年リリースされたsalmosax ensemble名義の新作『祝子 / houriicon』、さらにTomas Korber / Christian Weberとの共演『Signal to Noise Vol.2』までを揃えた。要するに山内の音が気になっている。それにも拘らずそのライブに行っていないのは、タイミングと踏ん切り。



『Salmo Sax』とその続編『Patiruma』はサックスによるソロ演奏集。サックスのソロ演奏といえば阿部薫という最大のインパクトがあって、その後Steve Lacy、Lee Konitz、Anthony Braxton、John Butcher、Evan Parker、Mats Gustafsson、Warne Marsh等々多々色々聴いてみた。そういうものを好むオレはどれも気に入っているのだけど、山内のソロ演奏集は、阿部以降、最もインパクトのある作品だと思う。この2つの作品に収められているのは、キーをカタカタさせたり、管楽器で出したい音とは違う音等が使われる特殊奏法を駆使した弱音系を思わせる様なものと、短いフレーズのミニマルに繰り返すものに分類される。そのどちらも、聴かせようとしているのは音色に限定されているように思える。

ところが『祝子 / houri』は、山内によるいくつかのサックスのオーバーダビングで作られた作品。素朴ともいえる楽曲はハッキリとした決め事で成り立ったと思われるもので、これを手に入れた当初はあまり面白く思えずに繰り返し聴くような事は無かった。だけどある時、これも結局音色に言及した作品じゃないのか?と思って、再度耳にして、もしそうじゃないとしてもここでの楽器の響きはAlbert Aylerが弟やDon Cherryと音を重ねあっているように聴こえたり、ベース音が強いものにはGlassのサックス・アンサンブル的なものを感じたりして、結局オレのツボに触れている事に気付く。



まあ要するに、極めて個性的で注目したくなるサックス奏者だと言いたいのだけど、大分在住であり、東京では個人的には足を向けにくいところでの演奏が多いのでなかなか踏ん切りが付けにくかったけれど、昨夜のソロの演奏や、方向の違う音の中でサックスの音色の上澄みを抄っている様な作業を聴いていると、その音を聴く為に労を厭わないことを自分に課す必要があると思った。









salmosax ensemble 『祝子 / houri』









山内桂 『Patiruma』









山内桂 『Salmo Sax』