Duo (鬼怒無月 / 鈴木大介) & 勝井祐二

元々、今夜は高円寺のショーボートでナスノミツルのライブを見るつもりだったのだけど、金曜のBondage Fruitのライブを見た後から考えた結果、ピットインで鬼怒無月鈴木大介のDuo+勝井祐二を見る事に変更。ショーボートには行った事がなくて、ピットインには足を向けやすい事も関係している。それと、鬼怒無月3daysじゃなくて勝井祐二3daysになってしまう事も面白いかと。



1年ほど前に見たThe Duoはピットインというハコで行われる類の音では無く、ものすごく繊細な音を聴いたという記憶が残っている。が、今夜はTheが付かないDuoというユニット名。それは、書かれた曲ではなく即興演奏を行う時に用いると、今夜の冒頭のMCで鬼怒が説明していた。



さすがにという言葉を加えるべきか、客席が普段と少々異なる。昨夜とのギャップは当然としても、一昨日の客席とも違う。ピットインから近場にある伊勢丹の袋というものをここで見かける事は少ないのだけど、昨夜はそれがチラホラ。思わず「おお・・・」という心情。クラシック効果?



1st、まずは鬼怒と鈴木のデュオで演奏を始める。音にジャズの要素が全く無い、繊細で澄んだ音が響く。出が小さく、緊張感を呼ぶ。クラシック音楽を見ながらの即興と思われるような演奏。この場で、こういう音が聴けるのはこの組合せの時しかない。

続けて勝井が加わる。今夜の勝井は全体的にディレイを多少使った程度の素直なヴァイオリンの音。そこに足元のエフェクト類でエレクトロニクスな音を扱う。

トリオでの最初の演奏は、フェードイン&アウトをしながらミニマルなフレーズを鬼怒が繰り返す。Reichの「Different Train」ライク。

次の曲で鈴木がスプーンの様なものを弦にあてる。右手で弦に擦る様に摩ったり、左手に持ってスライドバーの様に扱ったり。前曲の様なミニマルな雰囲気とは違い、多少の流れるフレーズがいくつか。

この1stでの勝井の音の扱いが印象的。一音を次の音の為に使う事が無く、その瞬間の音が大事である事を言う様に、ゆっくりと音を連ねる。それを全部別々の扱いとして聴いていたけれど、もしかすると大きなフレーズとして成り立っていたかもしれない。

2ndも鬼怒と鈴木のデュオから始まる。一度勝井の入った状態からまたデュオに戻られると、その緊張感で場が引き締まる。そしてこの後は勝井が加わり、1stの3曲目に近い印象の曲が続く。少しだけブルージーな音やRy Cooderに似た乾いた響き、さらにスパニッシュな感覚等が、無理なく連なる。勝井の扱うエレクトロニクスな音も、なんとなくクラシックに寄ったかのように感じられた。



1stでは紹介程度のMCだったけれど、2ndは鬼怒勝井のボケと突っ込みが絡む。さらにそこに鈴木が何とか加わるという展開。無理矢理なネタとしてガッチャマンガンダムにつないだ鈴木だったけれど、世代的に2人には苦しいネタ。それをなんとか広げようと、「鬼怒君にとってヒーローと言えばGong」という迂闊なネタ。無反応な客席・・・。大きく滑った勝井。「オタの多い一昨日ならドッカンドッカン来るところ・・・」と苦しい言い訳。一昨日は「GongにSteve Etoが?」という鬼怒の大ボケもあり、確かにGongネタは絶好調でした。残念。



例えばノイズとかが壮絶に鳴り響いて、その狂乱の中で美しい何かを見つけたり、グロテスクな表現の映画とか絵画とか、そういうものに美しいと思えるものがあったりするけれど、それはどこかマッチョなものが入り混じっているような、最近はそういう風に思う事がある。今夜のピットインでの音はそういう装飾を全く必要としない響きで、躊躇無く美しいと言える音だった。非現実的で、少々前後を不覚にする。そういう意味でドラッグな音とも言える。