Lou Reed

誰かの誕生日というものを覚えきれない。自分のはさすがに覚えているけれど、殆どの知人のそれは無理。知人のというより自分以外。親兄弟の誕生日も覚えていない。忘れたんじゃなくて覚えた事がない。

だけど時々、なんらかのキッカケでインプットされる事がある。知人に今日誕生日の人。それを覚えてしまったのは明日が誕生日のDerek Baileyと1日違いが理由。アホらしく見えるかもしれないけれど、残念ながらオレには凄い出来事。だけどその知人におめでとうを言う機会はない。なのでここに「おめでとう」と書いておく。けれど、ここに目を通すわけではないのであまり意味は無い。



一応上記から話はつながる。その知人が色んな音楽を知りたいと言った時にLou Reedの『Magic and Loss』を渡した。『M&L』は2枚持っていて、その状態が続く必要も無かったので1枚を贈呈。こうやって少しずつ布教活動。だけど残念ながら気に入ってくれた感じは無かった。『M&L』は渋い方の作品だから仕方が無い。だけどオレは『M&L』は傑作だと思っている。



昨年『Lou Reed's Berlin (邦題 ルー・リード / ベルリン)』が公開されて一部で話題になった。それを見に行ったログは書いたけれど、結局そのDVD『Lou Reed's Berlin』とCD『Berlin: Live at St Anns Warehouse』を入手。改めてDVDを見てみると、さすがに映画館で見た時の感動は無い。冷静に見ていると、このコーラス隊とか好みじゃないし、オレの好きな「Lady Day」なんか、『Rock N Roll Animal』でもイマイチだったように、やはりオリジナルなスタジオ録音の方が遥かに好み。Lou Reedの声は深みが増した事によって凄みまで出てきたけれど、全体としてはあまり面白くないかもしれない。映画館で見ただけの思い出にしておけばよかった。買う必要は無かった。



妙に『Berlin』の再現ライブが注目されたけれど、2002年ベルリンで『Metal Machine Music』をZeitkratzerという(多分)現代音楽の演奏者集団が弦楽器を音のメインとして再現というプロジェクトのライブもあり、それはブートで音源が出回った後に正式な形で『Metal Machine Music』という作品としてリリース。同音源のCD+DVDという構成。『MMM』はLou ReedRCAとの契約をこなすために作り上げたと言われる作品で、さっさと縁を切りたいLou Reedとしては「バーカ、バーカ、RCAのバーカ」とか言いながら録ったはず。そして出来上がったそれを、「John Caleに負けない過激な現代音楽つくったから。VUファンにウケルかも。良かったね。」とか言って渡したはず(勝手な憶測)。

Zeitkratzerによる音はあの『MMM』の過激さを伝えるために少々ヒステリックに音が鳴り響いたりするけれど、結構カッコいい。終盤、少しだけLou Reedが登場してギターソロをかます。キメキメ。



昨年はJohn ZornとLaurie Andersonとのトリオによる『The Stone: Issue Three』もリリースされている。ZornによるStoneというライブハウス継続のための資金集めプロジェクトの第3弾。こっちは即興セッションによるアヴァンギャルドな演奏。John Zornとの演奏というのは意外な組合せだけど、VUが元々NYのアングラなバンドだった事を思えば、今のZorn達はその継続にあたるかもしれない。

そしてさらに昨年末、『MMM』を思い起こさせるMetal Machine Trio名義で『The Creation of The Universe』という作品がDL先行でリリース。CD盤を予約してもDLも出来るとの事で、早速CD盤の予約をしてMP3をDL。こちらは『MMM』の再現ではなく、ギター、サックス、エレクトロニクスによる絡み合い。多分即興セッション。

昨年リリースされたこの2つのセッション、ゆっくりと音の場を作るフリージャズ的な『The Creation of The Universe』に比べて、一気に音が立ったりするアヴァンな『The Stone: Issue Three』の方に耳は反応しやすい。

どちらでもLou Reedのギターはフリーではあるのだけど、実はどちらのセッションでも『M&L』の最初の曲である「Dorita」に似た音とフレーズが出てくる。



今年の3/2で67歳になるLou Reed。そういえば一昨年『Hudson River Wind Meditations』なんてのも出してたな。ここにきて過激な方向に戻りつつある(というより戻った)のが一体どういう事なのかよくわからない。そこが面白い。