マーク・ラパポート(じゃずじゃ)presents:“Tokyo Conflux” 番外編:《日米インプロ条約》

ずいぶん長いタイトルだけど、クラシックスのスケジュールからのコピペなので仕方が無い。多分これが今夜の正式なタイトルのはず。

Mudhoney漬けから逃れるつもりは無いのだけど、これは元々行く気満々だった。Tokyo Confluxがタイトルに入っているけれど、今回はユーロ勢ではなくUS勢を迎えてのセッション。

アコースティック・ベースのJason Roebkeは2年ちょい前に八木美知依さんとのデュオを今夜と同じクラシックスで見ていて、インプロするベーシストとしては珍しくガツガツ音を出さない印象が残っている。もう1人のアコベのThomas Morganは全く聞いた事の無かった名前。コルネットのJosh Bermanも不勉強で知らない。加えてドラムの田中徳崇と十七絃と二十絃箏の八木さん。



1st、まずはBerman、Morgan、田中のトリオ。いきなり初めて聴く2人が揃う。コルネットのBermanは、終始軽快に淀み無く吹くタイプ。奇を衒うような音は一切無し。特殊奏法も殆ど無くて、いくつかのミュートで変化をつける程度。Morganは繊細とは少し違うけれど、他に言葉が見つからないので繊細という事にしておく。アコベらしい響きの音を最小限に抑えているように聴こえ、なんとなくクラシックの素養がありそうなアプローチ。

続いて、Roebke、Morgan、八木さんによる弦楽器トリオ。アコベ2台と八木さんの十七弦。まず他では聴く事の出来ない編成。これがインプロなセッションの醍醐味。で、この演奏の音色。が、かなり。Roebkeは間を持った演奏をする人で、だけどアコベらしい音の響きを上手く扱う。演奏に対するスタンスはRoebkeとMorganで異なるタイプという感じではないのだけど、アプローチは異なるわけで、それが上手く混ざる。その音の上を八木さんの十七弦がバリトン・ギターの様にラインを置いていく。

1st最後は八木さんが二十弦、それと多分Bermanと田中の組み合わせ。のはず。すみません、八木さん以外の面子を覚えていない。というのも、この演奏は完全に八木さんの音だけ拾ってしまった。ここで八木さんの奏でる二十弦はあれ、ワンパターンな言い方、Baileyに聴こえる。あの繊細で普通じゃない音と同じに聴こえる。こんな音を聴かされたらオレは他の音は拾えない。

2ndはRoebkeとMorganのデュオから始まる。アコベのデュオの録音物は聴いた事があるけれど、ライブでは初めて。こういう場合、どちらかがアルコで演奏するのかと思ったけれど、そういう気遣いは無し。というか、そういう事を選ぶ必要が無い。ここでのMorganの音を聴いていて、なんとなくアコベというより、ギターの5と6弦を使って演奏しているような雰囲気を勝手に感じた。

続いてBermanと八木さんのデュオ。ここで、今夜のここまでで初めて強めの音が八木さんから出てきた。Bermanはどうするかと思ったら、相変わらず飄々と。

最後は全員でのセッション。この演奏の印象は田中が持っていく。ある程度演奏が進み音数が減り、終わりかと思っていたら、ここから田中のソロ状態。以前田中の音の印象を、ドムドムという意味のわからない言葉で書いてしまったけれど、それは自分でもどう説明していいのかわからなかったという事で、でも今夜、なんとなく田中というドラム叩きの個性がわかった(気がする)。実は音数は凄く多い。だけど大きな音やインパクトのあるワンショットを持ち込まない。とにかくずっと、ロールする様にドラムに接する。例えば小さな、繊細な音でのドラムの演奏というのは今までにも聴いている。それの最たるが、昨年のSusannaのライブでドラムを叩いていたPal Hausken。そのHauskenと田中は決定的に違っていて、Hauskenは小さな音で演奏しているのだけど、田中は大きくない音で演奏している。言葉遊びではなくて、本当にそういう違いを思う。小さな音での演奏は音そのものが消えてしまったりするけれど、田中は音を消さない。敷き詰めるように音が残る。点が線になるような音の羅列。まあとにかく、そういう印象の音で場を揺り動かすように叩き続け、それでもそれまでの雰囲気を壊さず。