つまりひとりからだから (大友良英 × 田中泯)

今年最初のライブ鑑賞。これでやっと、今年が始まった感覚。元旦。一月一日。正月。じゃない。



ハッキリとした予定で言えば、今年最初に見るライブはJoy HeigtsとMudhoneyのダブル・ヘッダーになるはずだった。だけど昨夜大友良英のブログを見て今夜plan-Bで田中泯とのデュオがある事を知る。そして予約を煽る文章。即メールして予約。今年のオレも大友の煽りに弱い。



詳しいことはわからないけれど、一昨年ぐらいに山梨かどこかでこの組み合わせのライブがあったはず。さらに、その後も共演はあったように思う。田中泯がどれぐらいの知名度かは知らないけれど、個人的にはDerek Baileyとの『Dance and Music』とビデオの『Mountain Stage』で共演をした人としてインプットされている。正直な話『Mountain Stage』は1度見ただけで眠らせたまま。『Dance and Music』も何度も耳にしたというウソは付かない(反省して今はそれを聴きながら書いてる)。だけどBaileyと舞踏家の共演という変わった組み合わせについては頭から離れるはずが無くて、Baileyのライブを経験出来なかったという悔しさを、Baileyと共演した人をなるべくライブで見る事によって埋めようとしている。しかも相手は大友良英。見る理由としては文句なし。

plan-Bには初めて行った。名前は知っていたし、中野にあるという事も知っていた。だけど最寄り駅が丸の内線の中野富士見町というのは迂闊だった。中野といえば勝手にJRの方だと思っていた。新宿から近いのに初めて行く駅。さらに何故か中野坂上で同じ丸の内線に乗り換え。方南町方面というヤツ。しかも駅から徒歩7分と書いてあった。方向感覚だけは良い方だけど、これは結構不安が募る。そしてロス無く中野富士見町につくと、まるで開けていない雰囲気・・・。ここはホントに新宿からわずかの距離なのか・・・。不安な気持ちのまま歩き続けたけれど、無事にplan-Bに到着。

入場料を支払い中に入る。と、ステージらしきものは無く、やたらと狭いところに人がウヨウヨ。「なんだこれは?」と思っていたら、ロビーの様な扱いの部屋だった。数分後、無事ステージらしきものがあるところに入った。

後方に行くほど席が高くなる座席で、といってもベンチな状態の席だけど、それでも視界という点ではどこでも得られるから、そういう点がライブハウスなんかと違って流石。それでも全体的な雰囲気は写真でしか知らない70年代のアングラな場所だったけれど。



長い前置きも終わり、やっと本文。



田中泯大友良英の登場。大友はアップライトなピアノに向かい、まさかと思ったけれど、そのピアノから音を出す。鍵盤を弾く(触ると言ったほうがいいかも)大友を初めて見た。田中は客席に背を向けたまま舞台のハジに座っていて、フレーズとは違った1音の響きのピアノを弾く大友の音に合わせるでもなく、少しずつ、ホントに少しずつゆっくりと動く。黒の上下とサングラスの田中。オレの記憶では暗黒舞踏の白塗りな人なのだけど、黒の上下とサングラス。要するに普通な格好。だけど齢63歳には見えない引き締まった体躯。素直にカッコいいと思った。と言ってもそれは姿の事であり、暗黒舞踏についてはよくわからないから、あれをどうこういうのは門外漢すぎてマズイ。でも昨年Nik Baertschと共演したImre Thormannほどの見た目のヤバさが無い分、余計に動きの独特を感じる。

大友はピアノを素に近い状態の音とエフェクトされた音で扱い、さらに、ギターを押したり踏んだりして演奏。壁寄りに吊り下げられた錆びた鉄板の様なものにピックアップの様なものを取り付け、ドライバーみたいなもので叩いたり擦ったりと、色々。勿論基本はノイジーな音。デュオとは言っても音は大友1人で賄うわけで、そういった意味で久々に大友の無伴奏ソロ演奏を聴いた気分。

時間が進むに連れ、田中の動きも顔の表情を使ったものや、大きな動きやポーズが入り、変化が出てくる。大友の音も場に敷き詰められたり突然止まったり、突然の変化が出てくる。田中はそれに反応する様なしない様な動き。オレの性格上、どちらも目で追ってしまい、気が付くと田中が確認していたところとは違うところに居たりする。散漫な客。



結構客入りは良かったんじゃないだろうか? そのうちの7が田中で3が大友目当てというのが妥当な線? ライブは1時間ほどで終わったのだけど、音楽のライブしか知らないオレの様なやつは、引っ込んでも拍手し続けてアンコール要求をしてしまいそうだったけれど、その音がドンドン小さくなるのを聴いて、こういうものはそういう事をしないんだな、と気付いてさりげなく拍手を止めた・・・。



上手い事まとまらない。というか、今までも上手くまとめた事はないけれど、今回は特に。良いとかそうじゃないとか、田中の動きも大友の音も、そういう判断で結論出来るものじゃなかった。とにかくどちらの存在感も強烈だったとしか言えない。こういうライブは結構後を引く。