渋谷毅 / 松本治

過激に演奏を進めていくものも好きだけど、というより、基本的にそういうものを好んできた。そういう音楽を好んで聴くようになったのはジャズからの流れで、フリージャズ、フリーインプロ、アヴァンギャルド、ひたすらノイズ、そして静寂と、それなりに聴いてみた。でも、とりあえず録音物に限定すると、そういうものに少々飽きてきている。それは、抽象的な表現というものが聴いた個人の判断によって良い悪いを委ねられているというより、著名な人や関係者がそれを肯定してしまえば、それを宣伝文句にして優れたものとして流通しているような印象のものがある事に起因。



渋谷毅と松本治のデュオによる『帰る方法3』は6月にリリースされたものだけど、11月になってやっと手にした。なんとなく気になりつつも、なんとなく手にしない状態が長く続いた。それは多分、そのうちこれをちゃんと欲する状況が来る事を感覚でわかっていたからだと思う。

この作品の朴訥とも饒舌とも取れる音の運びを聴いて、渋谷というピアニスト、或いは松本というトロンボーン奏者のわかりやすい個性を見つけきれないけれど、そんなものが必要な理由もよくわからなくなってきた。









渋谷毅 / 松本治 『帰る方法3』