酒井俊

今夜は酒井さんのライブだったのでピットイン。今月2回目になってしまった。



ピアノの田中信正なってるハウスで『Night at the Circus』というライブを行っているらしく、今夜はそれの新宿出張編で、芳垣安洋を加えて『Night at the Circus”新宿番外編』だとか。



この3ヶ月で4回目の酒井さんのライブ鑑賞になるのだけど、全部インスト陣の組み合わせが違っている。歌う側からすればキツイ状況を選んでいる事になるはずだけど、インストが歌の伴奏であると同時に、歌の無いところではそれのみの音楽を成り立たせる事を考えて演奏者を選んでいると思う。そうやって考えてみると、単なる歌モノのライブという捉え方とは異なってくる。



10月に初めて音を聴いたピアノの田中は、その時も面白いかもしれないという感想が残ったけれど、今夜の演奏で、そんなレベルで片付けてはいけないと認識。どちらかというと憑依型のピアノを弾く。このところ、そういうピアノは苦手なのだけど、田中の音は、その手のピアニストのやけっぱちとは違う。フリージャズよりも、現代音楽とジャズの中間で音を連ねているような印象。このピアニストは相当面白い。多分まだ若手のほうだと思うけれど、個人的にはスガダイローよりもこの人が注目を集めるべきだと思う。



芳垣はまあ、今更書いておく事は無いのだけど。歌モノの伴奏なので、それと一応ジャズなので、煽るような叩きは使わず、擦り摩りを交えた音作り。オレはこういう演奏がホントに好きで、ドラムがビートを叩き出すだけのものから、時に上モノとして存在する事が出来る事を一番気付かせてくれるのが芳垣だと思う。



酒井さんも、まあ、今更なのだけど、とにかく表現力の人だと思った。彼女の歌には歌うだけじゃなくて、冒頭に語りが入っているものが幾つもある。そこは好き嫌いが分かれるところでもあるはず。だけど、酒井さんという歌い手が、歌を表現するにはその部分が必要という事だろう。今夜の「Amazing Grace」のイントロは、そこを表現するインスト陣も含めて独立した表現になっていて、ライブという場を活かした音の密度を使った表現だった。




今夜も客席はまばら。優れた歌と演奏が近くで聴けるという状況を見過ごすのはもったいないとしか思えないけれど、多分そういうものだろう。それなりにライブに足を運んでいるつもりのオレも、全然知らないものは多々多々ある。オレもどこかでもったいない事をしている対象。



明日はスーパーデラックスで芳垣がヴァイオリンの定村史朗という人とセッション。そこに田中も名を連ねていて、連夜、この2人の音が聴ける。