Atomic

今日でAtomicの日本ツアーも終わり。

二夜連続で同じバンドのライブ、しかも、ゲストも無く場所も同じでセッションではなくて曲を演奏する。そういう事を考えれば、まあ、大きく違いは出ないと思っていい。多分今夜もそういう事になると思ってたし、日曜の夜という黄昏な時間帯なのでログを書くのもめんどくさいから、実はある程度予想をして下書きを書いておいたのだけど、破棄。



昨夜は2ndだけがAtomicというバンドになったイメージだった。だけど今夜は1stから演奏が入り込む。昨夜の印象ではこのバンドにはグルーヴが足りないと思っていたのだけど、今夜はIngebrigt Haker Flatenのベースが響くようになり、それによってグルーヴが出てきた。それがPaal Nilssen-Loveの音の抑えにもなっている。オレが感じた大きな変化はそれだけ。だけど、これによって聴こえ方が全然変わった。

トランペットのMagnus Broo。昨夜はLee Morganを勝手に思い出していたけれど、今夜は確かにDon Cherryを思わせる、懐の広い呟く様な音が際立つ。大きく吹くところでは、Freddie Hubbard並の溌剌とした音。ぶっちゃけ、個人的なMVPはこのBroo。

MC担当で一番愛嬌のあるFredrik Ljungkvistは、昨夜も感じていたのだけどテナーよりもクラリネットの表現が良い。テナーは、脇でブリブリ色付けしている印象しか残ってない。でもBrooとの2管がテーマを奏でるとAylerのバンドみたいで面白かった。

Havard Wiikは流石。担当楽器のせいかもしれないけれど、この人が一番余裕を持って演奏している。ドシャメシャに弾くピアニストより、考え込んで音を入れ込むタイプが好きになりつつあるオレにとっては、好みなタイプ。

PNLは、この人が1番人気だろうし、特別な存在として扱われていることもよくわかっている。オレは今年、Sten Sandellの2days、Tokyo Comflux、そして今回のAtomicの2daysと、彼の音をかなり聴いている。恐らくだけど、マークさんと八木さんを除けば日本でのPNLの演奏を最も聴いている1人(のつもり)。だからそれらを合わせての印象になってしまうけど、この人の強みはやはりマッチョな叩き。スピード、パワー共にこれ以上というのをオレはライブで聴いた事がない(同じぐらいの印象のものはある)。だけどジャズとしてはブラシの音が強すぎる。PNLの音の中では対比としては小さく繊細な音になっているけれど、でもブラシの音としては少々耳障りな部分がある。そして、時折ワンショットで叩き込んでくるフロアとバスドラの音が大きすぎる。心臓に悪い。こうなると若干こけおどし的に聴こえてしまうので、もう少し力を抜いてもいいのではないか?と思う。だけど、よく考えたらまだまだ若いんだよな。そう思えば、当面はこのままガツガツ行った方が面白いのかも。強烈にサディスティックな音のドラムになるのも1つのスタイルだし。極めた後に変化するのも有りだろうし。



とりあえずプレイヤーの印象を書き連ねたけれど、とにかくオレの印象としては昨夜よりも今夜の方が演奏が良かった。特に圧巻は2ndの最後の曲。この圧倒的な音の場は昨夜の演奏からは感じられなかった。二夜行って成功。

しかし、ここまで印象が変わってしまうものだろうか?、と思って日程を見直した。3日のライブから昨夜まで、常に違う場所での演奏。恐らく毎日午前か昼に移動をしている。だけど今日は移動は無いはず。そこでコンディションが整ったんじゃないだろうか? 普段からこういう演奏活動を常にやっているだろうけれど、やはり落ち着く時間があるのと無いのではコンディションに影響は出るはず。今夜の演奏はその結果じゃないのだろうか?




二夜とも盛況。Murrayの時ほどではないけれど立見も必要な状態。Magnus Brooがあまりにも良かったので、この人のCDでも物販で買おうと思ったけれど、ピットインは人が多いと物販は使いにくくなるという皮肉な結果になり、めんどくさいのでそのまま帰路に。こういう状態のときは、ライブ終了後外で物販した方ががいいんじゃないか?といつも思う。



17日はいよいよ藤井郷子4。こちらはジャズであるという点で、Atomicと比べてしまう。Atomicの凄さを味わった人ほど、このバンドを見て欲しい。まあオレが言わずとも、足を向ける人は多々いるはずだけど。