Tendencies Beyond Calculation

現在はNYで活動中の加藤英樹がGreen Zoneで来日したのは、もう2年半以上も前。今度の土曜にピットインでGreen Zoneのライブも予定されているけれど、今夜はスーパーデラックスでセッション。結構な面子。が、客少ない・・・。20人ぐらい? これはさすがに・・・。



取り直して。1stは加藤と秋山徹次、中村としまるのトリオ。OMNIというユニット名がある。秋山はテーブルトップ・ギター状態、加藤もテーブルトップ・ベース状態。中村の手元は視界に入らず、それでもノー・インプット・ミキシング・ボードとは違う音だと思っていたら、さっきスケジュール表をみて、ギターと書いてある事に気付く。という事は、中村もテーブルトップ・ギターだったのだろう。

面子的に想像出来るように、演奏はわかりやすく言えば音響派的なもの(逆にわかりにくい?)。但し、その手の演奏としては珍しく、ハッキリとしたスコアがあるようで、それを見つめながらの演奏。しかし、ここで出てくる音の進行が決められている事が不思議な気分、決め事としてこれらの音を使うという譜面は一体どんなことが書いているのかちょっと興味深い。45分ほどの演奏だったと思うのだけど、流石に整理されているからか、或いは弱音の展開が殆ど無かったせいか、それとも単にオレがこの手の音に慣れてきたのか、とにかく聴きやすい。音の表情がわかりやすく、響きを追うという事をしなくても、展開を追うだけで飽きることは無かった。



2ndはオプトロンの伊東篤宏とギターの今堀恒雄によるデュオ。実は今堀の演奏は、unbeltipo吉田達也とのdoubtなセッションしか知らない。書かれたものの演奏。それが今回は、即興のセッションだったはず。あの今堀が即興で、しかもオプトロンと絡むというのはかなり興味深い。

ところが、ちょっとグダグダなセッションに思えた。はじめはノイジーな音を主に使っていた今堀だったけれど、それではオプトロンとのノイズ合戦になってしまうとでも思ったのか、ギターらしさを持った音が扱い始める。それも、伊東の音を拾って、それを展開させようとしているようで、だけど、なんとなく上手く絡み合ってなくて、ヒステリックな音が巻き散るだけのように思えた。飛び道具としてのオプトロンは面白いのだけど、結局はノイズ発生マシーンに落ち着いてしまうから、今堀の持つポテンシャルを引き出すまでには至ってなかったと思う。ま、初デュオだったらしいので、今後同様なことがあれば、もっと違った展開もあると思うけど。



3rdは、加藤と太棹三味線の田中悠美子口琴とパーカッションとその他のSamm Bennett。これもある程度ハッキリした構成のある演奏。

ここでの音はアコースティック。エレアコ的な加藤のベースは独特な響きを持ち、空間支配的にはならない。

でかい口琴(マウスボウ?)が印象的なBennett。ついこの間、Chicagoを歌っていたおっさん。今夜も歌声を披露する。多分英語で歌っているのだと思うけれど、日本的な旋律で歌うところもあり、そこに良い違和感。パーカッションは間引いたような音の扱い。

田中さんはミュートした音や、ハーモニクスの様な音が印象的。というか、それは明らかにオレの好きな音。その音で、無伴奏で演奏されても嬉しい。そして「大和魂」についての口上。多分その内容はどうでもいいものだと思うけど、そこからBennettにインプロを煽るのは面白かった。



もう1回加藤の音。この人を音響派と呼ぶつもりは無いけれど、明らかに音の響きを大切にしている人。3rdで自分が引かないときは、下を見て音を拾うことに集中している。自ら発する音も、細かい音の羅列は無くて、ショートなドローンのように余韻を作る。音楽の構成も、ちょっと他には見当たらない感じで、そういう意味に拘らないけれど、Green Zoneだけでわかったような気にならなくて良かった。